「ポートピア」は「ドラクエ」の前フリだった 堀井雄二氏のゲーム哲学(2/2 ページ)
「ポートピア連続殺人事件」は、RPGのコマンド操作の練習をしてもらうために発売したという。「ドラクエは常に初心者に親切でありたい」と堀井雄二さんは話す。
ドラクエはその点、ラッキーだったという。「ドラクエの場合ハードが進化した。ハードの容量が増える中で、やれることが増えていった」ためだ。
初代を開発した当時。ファミコンはカセットの容量が小さく、初代ドラクエはわずか64Kバイト。「携帯の待ち受け画像より小さい容量で、グラフィックも音楽も全部入れた」ため、文字数を制限し、アイテムの種類も15種類に絞り、モンスターもビット単位で計算するなど、さまざまな工夫を施したという。
II以降は容量も増え、内容も充実していった。IIは3人でのパーティプレイになり、IIIは4人パーティになって転職機能が加わり、IVはAI戦闘が加わった。「内容も濃くなったし、長くなった」。
ドラクエVIIIとIXには、プレイヤーの「テンション」を徐々に上げてるシステムがある。テンションは、5→20→50→100と4段階で上がっていく。「僕はデジタルをファジーにするのが好き。論理的なんだけどファジーで、ワクワクする。5→20→50→100という数字も感覚で決めた。誰かに突っ込まれるかと思ったら誰も突っ込まない」。テンションシステムは、グループ魂の「お・ま・え ローテンションガール」を聞いていたとき思いついたという
プラットフォームは、IVまではファミコンだったが、その後、スーパーファミコン(V、VI)、プレイステーション(VII)、プレイステーション2(VIII)へと進化。そのたびにスペックが上がっていった。
「VIIIはある意味、僕にとって夢だった。初代を作った時も、VIIIのような映像を考えながらやったと思う。VIIIは、フィールドをどこまでも歩いていける。スゲーな、面白れぇな、ゲームをここまでできるんだな、と思った」
最新作のIXはニンテンドーDS用で、「初めてハードの性能を落とした」。容量制限には「結構、悩んだ」という。特に、シナリオの量とそのほかの要素とのバランスに悩んだそうだ。
ユーザーの思いが、ドラクエを国民的ゲームにした
ドラクエシリーズは“国民的ゲーム”に成長した。
「国民的ゲームは、『作るんだ』と思って作れるもんじゃない。最初は国民的ゲームでもなんでもない。プレイした人が成長して、思い出を子どもたちに伝えてくれ、より多くの人が1つのゲームを話題にできることで、だんだん国民的になる。持続と広がり。20数年の歴史とみなさんの思いがそうした。親と子どもが同じゲームで遊べるのはすばらしいことだと思う」
ドラクエは、漫画家で言えば、手塚治虫さんではなく藤子不二雄さんを目指すという。「成長したプレイヤーに向けていくのではなく、あくまで初心者向け。ドラゴンクエストは藤子さんになればいいなと」
今後のゲームについては、「ハードが進化し、やれることも増えるが、面白さの本質はそんなに変わらない」と話す。
「やれば面白いゲームは結構あると思うが、今の人は、暇つぶしが山ほどある。『あえてこのゲームをやってみたい』と思わせる、やる前のとっつきの、分かりやすさ、ワクワクしそうな気がする、ということが重要。ゲームをたまたま買ってくれた人が分からなくなってしまわないように、親切に分かりやすく設計すべき」
ゲーム開発者は「アンテナを常に立て、感性を磨くことも大事」と説く。「携帯漫画も流行ってるらしいし。時代の流れは面白いなと」
「ゲームはなくならないと思う。過去『大学生が漫画を読む』と騒がれた時期があったが、その世代が今は60歳ぐらいになっていて平気で漫画を読んでいる。いまの若い世代が老人になって、いきなり盆栽をやるとは思えない。ゲームはコンピューターメディアを使った表現物。産業としてはなくならないし、いろんなパターン、いろんなジャンルのものができてくると思う」
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