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震災の記憶、未来へいかにつなぐか──デジタルアーカイブの挑戦(3/3 ページ)

東日本大震災の記録を残すデジタルアーカイブが続々と公開されている。一方で著作権問題や、長期保存のためのコスト、資料の活用促進など課題もある。

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長期保存、コスト面で課題も

 デジタルアーカイブのプロジェクトは現在、様々な機関や団体が進めている。国立国会図書館では、被災地自治体のサイトを重点的に収集しネットで公開。米ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所や米非営利団体InternetArchiveでも、サイトを保存する計画が進行中だ。東北大学防災科学研究拠点も文部科学省や日本アイ・ビー・エムなどとの産官学連携による「みちのく震録伝」をスタートさせた。また、独立行政法人・防災科学技術研究所が民間と進めている「311まるごとアーカイブス」や、せんだいメディアテークの「3がつ11にちをわすれないためにセンター」、河北新報社の「3.11大震災 将来への記憶」など規模や形態は様々だが、取り組みは広がっている。

 一方で、デジタルデータによるアーカイブは、長期保存の問題も孕んでいる。「サーバーの維持管理費が尽きれば、デジタルアーカイブは維持できなくなります。これまで自治体による文化財や観光名所など、予算が続かずWeb上から消えてしまったアーカイブは多い」とアカデミック・リソース・ガイドの岡本さんは指摘する。神戸大附属図書館の稲葉さんも、「今回、津波の映像や動画はインパクトがありました。それが引き金になって、デジタルアーカイブは増えています。デジタルデータは活用しやすいですが、現物資料の収集保存と両輪。震災の記録をアーカイブとして残すには、その双方が必要だと思います」と「震災文庫」の経験から語る。

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総務省による東日本大震災アーカイブ基盤構築プロジェクト

 長期的な保存問題に加え、様々なデジタルアーカイブが乱立することにより、ユーザーの利便性が損なわれる恐れもある。そこで総務省では現在、国立国会図書館などと協力、ネット上に分散している東日本大震災関連のデジタルデータの保存を永続的に保証し、一元的に検索、活用できるソフトの開発を目指す「東日本大震災アーカイブ基盤構築プロジェクト」を立ち上げた。ライシャワー日本研究所でも、複数のデジタルアーカイブを横断して検索できる「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」プロジェクトを進めている。

 来年1月11日には、総務省と東北大、ライシャワー日本研究所が、国内外で進む主要な東日本大震災のデジタルアーカイブ関係者を集めた国際合同シンポジウム「東日本大震災アーカイブの最前線と国境・世代を超えた挑戦」を仙台国際センターで開催。デジタルアーカイブのあるべき姿を議論する予定だ。

 「ためているだけでは意味がない。アーカイブを素材集として新たな形に再編集し、復興支援や防災に活かしていかなければいけません。デジタルアーカイブを進めている団体がAPI公開を含め、色々な視点で再活用できるようにしていくことが今、求められています」とヤフーの高田さんは話している。

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