「遠隔操作によるえん罪防止に」――通信記録ソフト「パケット警察」、ソフトイーサが緊急公開
遠隔操作プログラムによるえん罪事件を受け、Windows用の通信/プロセス記録ソフト「パケット警察」をソフトイーサが無料公開。「被害を受けた方が自己の無実を証明し、真犯人を追跡するための重要な証拠として利用できる」としている。
遠隔操作プログラムによるえん罪事件を受け、筑波大学発ベンチャー企業のソフトイーサ(茨城県つくば市)は10月22日、Windows用の通信/プロセス記録ソフト「パケット警察」を緊急で開発し、無料公開した。PCの通信記録やソフトウェアの起動記録を見張り、自動でHDDに蓄積。PCを遠隔操作されて誤認逮捕されるなど、「被害を受けた方が自己の無実を証明し、真犯人を追跡するための重要な証拠として利用できる」としている。
PCに接続されているLANカードを流れるデータをキャプチャし、指定した種類のTCP/IPパケットのヘッダと日付、時刻(ミリ秒単位)を、テキスト形式のログファイルでHDDに記録。プロセス起動・終了ログも、ミリ秒単位で記録する。
デフォルトではTCP/IPパケットの重要なヘッダ情報を記録するが、設定変更でデータすべてを記録したり、TCP/IP以外のパケットを記録することもできる。HTTPパケットについては、ヘッダ情報に加え、アクセスしたURLやパラメータ、UserAgentなどの情報も記録できるため、遠隔操作プログラムがリモート制御のためのHTTP通信を海外のサーバ間で行なうなどしていた場合、その通信記録も取ることができる。
Windows Vista/7/8のUAC(ユーザーアカウント制御)に対応し、Windowsのシステム権限で動作。ログは、一般ユーザー権限で削除できない設定で記録するため、「一般的な遠隔操作ウイルスの手口では動作を止めたりログファイルを消去・改ざんしたりすることが困難」としている。
同社は、遠隔操作プログラムによる一連のえん罪事件が「ネット利用者の間で不安を引き起こしている」とし、「この不安を早急に解消しインターネットの安全な発展に寄与するため」、パケット警察を緊急で開発、無料公開したという。ソフト名の「警察」には、所有者が自分のPCについて「警察のように犯罪を見張る」という意図を込めており、「通信ログを警察に対して自動的に送信し提供するための機能は含まれていない」としている。
関連記事
- 「この人たちに捜査できるのか」 新たな冤罪が生まれる可能性
「サイバー空間では、捜査当局よりもハッカーなどの悪意あるユーザー側が、圧倒的な優位にある」。高度な不正プログラムが生まれれば、新たな冤罪を生む可能性もある。 - なりすまし事件、警察は「完敗」 発信元にたどり着くのは「ほぼ不可能」
なりすまし事件の捜査幹部は、「真犯人が何らかのミスをしていない限り、たどり着くのはかなり難しい」と完敗を認める。今回のプログラムは、専門学校で教えられる程度のプログラミング技術で簡単にできてしまうという。 - なりすまし事件、4人の誤認逮捕確定、供述誘導の可能性も
なりすまし事件で警視庁は21日、福岡市の男性に誤認逮捕を認め、謝罪。大阪府警も、アニメ演出家の北村真咲さんに、誤認逮捕だったことを認め、謝罪した。 - ソフトイーサ、リモートデスクトップVPNサービスを臨時で無償解放
ソフトイーサは、「PacketiX Desktop VPN オンラインサービス」を3月14日から臨時的に無償で解放する。 - 「SoftEtherを危険視するのはおかしいです」――19歳の開発者に聞く
19歳の学生が開発したフリーソフトが、いまネット上で大きな話題になっている。ソフトの名は、「SoftEther」。画期的なVPNソフトでありながら、一時公開中止になるなど波紋を呼んでいるこのソフトについて、開発者に聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.