「エンジニア1人で世界を変えられる時代、日本からイノベーションを起こすには」 伊藤穰一氏、Rubyまつもと氏など議論:新経済サミット2013(3/3 ページ)
ネット時代は、エンジニア1人で世界を変えられる時代でもある。日本から破壊的イノベーションを起こすには何が必要か。日本を代表するエンジニアやWeb企業のトップが語り合った。
中国や米国には、成功した起業家を賞賛する雰囲気があるという。「中国とアメリカにいった時、ものすごくほめられた。中国的な発想では、収益をあげてる会社はすごいし、アメリカでは成功に対するあこがれがある。好きで始めたことで、誰かにほめてほしかったわけではないが、日本では味わったことがないような感情をおぼえ、もっと頑張ろうと思えた。成長や成功、イノベーションが素晴らしいことだという価値概念を持つことが重要かなと思う」(田中氏)
まつもと氏は「日本人は自虐的になりがちだ」と指摘。「成功したことをさげすむのがいけない。田中さんをモデルにしたテレビドラマをやればいいのでは」と笑いを誘いつつ、「日本人は、日本だけ○○がないという表現をしがちだが、思い込みもある」とし、「隣にいる人をほめましょう、エンジニアを大切にしましょう」と呼びかける。
日本の強みにフォーカスすることで、勝ち目を大きくできるという意見も。森川氏は「欧州に通じる美しいものを生み出してきた日本人の美意識は誇るべき」と指摘。田中氏は「日本には任天堂などゲームメーカーがあったからこそ、ソーシャルゲームは日本で成功できた分野。知的で高付加価値なビジネスは、日本からでも世界で戦える」
Web業界は、政府にほめられたことがない
「われわれが今まで、政府に着目していただいたことは1回もなかった。国税局の方が何度か来たことはあるが、政府にほめられたことがない」――熊谷氏は冗談交じりに話しつつ、政府への提言を前提に、国政や税制に注文を付ける。
「シンガポール大使館からIT企業のリクルーティングを受けているが、税制がまるきり違い、最終実効税率で日本は3〜4倍だ。日本の企業とシンガポールの企業で、再投資余力に大きな差がつく。政府や政治家、官僚は、規制だけでなく、成長を支援するサービス産業になってほしい。成長諸国と比べ、日本はあらゆる点で数値が劣っている」(熊谷氏)
破壊は痛いですよ、いいんですか?
まつもと氏からは、「ちゃぶ台返し」な問題提起もあった。「本当に“日本から”破壊的なイノベーションを起こす必要があるのか?」というものだ。
「GoogleやYouTubeで、生活はすごく良くなった。これらのサービスは、日本人が作っていないからダメかというと、そうではない。どこにいても働け、日本の会社が海外の人をネット経由で雇える時代に、“日本から”イノベーションを、というのは愛国心のため? 心の問題? よく分からない。そんな世の中で、“日本から”破壊的イノベーションを起こすとは一体なんだろうというのは、改めて考えないといけない」
さらに、「破壊的イノベーションは、破壊するので痛いけど、いいんですか?」とも。「大企業の社長が『イノベーション』と言うのを聞くと、本当にイノベーションが起きたら、あなたの会社がなくなるかもしれないと思うけど、本当にいいの? イノベーションの怖さを甘く見てるんじゃないのかと思う」
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