「嫌だから規制する」なのか──児童ポルノ禁止法改定案、その背後にあるもの(3/3 ページ)
提出された児童ポルノ禁止法改定案には、単純所持の禁止やマンガ・アニメの規制につながる「調査研究」の実施が含まれている。改定案への懸念を論じた幸森さんは、法案が危険だと思う人は「声を上げてほしい」と話す。
――しかし今回の改定は、その土壌をばっさりと断ってしまう危険性がある。90年代に表現を厳しく規制された韓国の漫画産業の場合、彼の地の編集者に聞くとその後ものの見事に萎縮してしまったそうです。
今回の日本の規制も、産業としても萎縮効果が起こり、文化的にはもっと深刻なことに、アマチュアの土壌を直撃してしまう展望が含まれている。花だって、土の中に根っこがあるからきれいな花も咲かすわけで、そうした考察もなしにばっさり行く発想は、すごく後進的に感じます。昔のパロディ小説に出てきたみたいなおばはんが、21世紀になってもまだいたのかと。
正直、アレではないでしょうか。きっとエース級の戦力は国家財政とかを担当するわけですが、自分もとにかくなにか実績をつくりたいヤカラが、反対されにくい領域をいじって騒いでいるのではないかと邪推のひとつもしたくなります。教育関係は、票には結びつきやすいと言うし。
幸森 いや、信念はあるとは思いますよ。心の底から信じている。自分が不快に感じるものの、存在自体を完全に抹殺したいという人が一定量いることは確かだと感じます。問題は、その人たちが世の中全体を代表しているわけではないんですよね。それが議員立法という形で通ってしまうと、世の中全体の法律になってしまう。
だからね。私は「もしこの法案が危険だと思う人は、声を上げてください」と伝えたいんです。TwitterやFacebookでもいい。また、自分の選挙区の政治家のHPにアクセスして意見を送るのもいい。そして、選挙には行く。これから都議会選挙や、参議院選挙がありますから、選挙には参加する。とにかく自分たちも声を上げないと、一部の声の大きい人の意見が通ってしまう。それを見過ごしてしまうと、後から後悔することになるはずなんです。ですから、声を上げておきたい。そのことを残しておきたい、と思っています。
――後から後悔するのだけは避けたいですね。「ゆとり教育」なんかもそうだったと思いますが、善意からはじまったはずなのに後から反省することになる例はいっぱいありますから。
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