クラウドサービスから個人情報を分離して蓄積 ソニーが新システム開発 電子お薬手帳に活用
ソニーが、クラウドサービス上で個人情報を分離してユーザーデータを保存できるシステムを開発。第1弾として電子お薬手帳の試験サービスを始める。
ソニーは8月19日、クラウドサービスで個人情報を分離してユーザーデータを保存できるシステムを開発したと発表した。クラウドに不正アクセスされた場合でも個人情報が守られる構造になっているという。第1弾として今秋から、FeliCaカードを活用する電子お薬手帳の試験サービスを川崎市で始める。
新システムでは個人情報とデータを分離し、データのみをクラウド上に保存。個人情報はユーザーのカードに記録する。個人情報とデータは共通IDでひも付けられており、サービス利用時にはカードから共通IDを読み取ることでクラウド上のデータと一致させる仕組みだ。
一般のクラウドサービスがユーザーの個人情報とユーザーの使用データがペアでクラウド上に保存する形になっているのに比べ、不正アクセス被害を受けた場合でも、データだけでは個人情報と結びつけることができないため、セキュリティレベルが高い構造を実現しているという。
第1弾となる電子お薬手帳サービスは、FeliCa技術を活用し、専用カードとスマートフォン向けアプリケーションで調剤情報の確認や管理ができるようにする。2011年11月から今年3月まで川崎市宮前区で実証実験を行い、今秋から同市全域で試験展開する。
「お薬手帳」は、医師が処方した薬の名称や量、服用回数などの調剤情報を記録するもの。主に紙の手帳が利用されているが、持参忘れや紛失があると継続的に管理することが難しいという問題があった。
新システムではFeliCaカードをお薬手帳として利用する。患者が薬局に来店し、リーダーにカードをかざすことで調剤履歴と調剤情報を記録できるようにした。
患者は専用スマートフォンアプリから履歴を閲覧することも可能。薬剤師との対面時に手持ちのスマートフォンと連携させる手続きを行うことで利用できるようになる仕組みとし、薬の一覧や服用時間などのほか、特定の薬を飲んだ時に「頭痛」「めまい」「吐き気」などの副作用が発生した場合は症状を登録でき、次回訪問時にはその情報が薬剤師に自動で共有される。
新システムを採用することで、クラウドサーバには調剤データを、カードには個人データを記録する。個人を特定しない情報を統計データとして活用し、インフルエンザの流行状況や副作用情報などを分析することも考えている。
今後、サービスの事業化と、個人情報に配慮した新クラウドシステムの他ジャンルへの展開を目指す。ソニーの鈴木智行執行役員は「個人情報を守りつつ情報を蓄積するシステムの開発も含め、社会的にも意義のある事業と自負している。FeliCa技術の活用の1つとして、より多方面に展開できる足がかりとできれば」と話している。
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