“廉価版”iPhone 5cが「7万円」──「高過ぎ!」と驚愕する中国人(3/3 ページ)
“廉価版”とされていた「iPhone 5c」。だがその主戦場と目されている中国では「高過ぎ」と失望する声が上がっている。安価なAndroid端末が容易に手に入っている中国スマホ事情など、現地からのリポート。
3G方式にW-CDMAを採用する「中国聯通」(China Unicom)と、cdma2000の「中国電信」(China Telecom)は20日に発売するが、今後契約縛りありでもiPhone 5cを99ドル以下で提供すれば、まだ他国と比べても納得の価格になるだろう。ただしいずれのキャリアからも無制限のデータ通信サービスは提供されていないので、iPhoneを購入できる魅力的なプランが出たところで、誰もが気兼ねせずデータ通信を使うというわけではない。
中国聯通と中国電信以外にも、7億のユーザーを抱える最大手キャリア「中国移動」(China Mobile)からiPhoneが発売されるのではないかとも言われている。中国移動は2G(GSM)時代に圧倒的なシェアを獲得し、ナンバーポータビリティ制度がないため、今も多くのユーザーを抱える携帯キャリアだ。
中国移動は中国が主導して開発した中速度・低価格を謳う3G方式「TD-SCDMA」を採用したことから、専用チップを搭載しない限り、iPhoneが発売されたところでGSM(GPRS)で利用するしかなく、現時点ではTD-SCDMA版が出る予定もない(後述)。このため、ユーザーは従来から使っている電話番号をキープしながらデータ通信を利用するため、通話用に中国移動、データ通信用には中国聯通か中国電信と、SIMカードを2枚保有し、デュアルSIMスロット搭載の端末を利用する人も少なくない(中国聯通のほうがデータ通信が速いと評判だ)。
iPhoneを販売していなかった最大手という点で中国移動とNTTドコモは似ているが、データ通信の品質に評判が高いNTTドコモと、速度に期待できない中国移動ではポジションは全く異なるわけだ。
中国の情報産業省にあたる「工業和信息化部」は、TD-SCDMA/TD-LTE両対応に加え、W-CDMAも含む3方式対応iPhoneの試験利用を許可している。TD-LTEは中国移動が採用する4G方式だが、一部都市でのテスト運営にとどまっている。とすると4GのTD-LTE版の前に、3GのTD-SCDMA方式に対応した中国移動版iPhoneが登場するかもしれない。中国移動版はあまり期待されていないが、速度は出ないまでも非常に安いデータ通信プランが用意できるなら、地方都市でのiPhoneユーザーが増えるだろう。
中国ではiPhoneの勢いが落ちている。リサーチ会社「易観国際(Analysys International)」のリポート「2013年第2四半期(4-6月)中国モバイル端末市場監測報告」によると、4〜6月の携帯電話端末の販売台数(密輸入品や模倣品を除く)は9039万台。このうちスマートフォンは7711万台で、前期比2.4%・前年同期比101.9%それぞれ増加。スマートフォンが占める割合は全販売台数の85.3%に達しているが、「最もふるわなかったメーカーはAppleで、前期に比べ1.6ポイント落とした」という。またタブレットでも「(4〜6月期で)Apple製品の販売が思わしくなく、初めて前期比でマイナス成長となった」としている。業界は異なるが中国ではテレビ販売が好調に推移しており、“不況だから買えなくなった”とは言いがたい。
中国でのファーストインプレッションはいいとはいえないが、中国において若者にとってもIT音痴の中高年にとっても、iPhoneは最高のメンツアイテムである。細かい価格差を気にしない人が集まって、発売日にキャリアショップやApple Storeに列を作るだろう。Apple離れが起きるかどうかは、今後の価格改定やキャリアの安価なiPhoneプランにかかっている。
関連記事
- 5cは「割高」、5sは「新しい機能に欠ける」?──新iPhoneに分かれる見方 Apple株は下落
Appleの新iPhoneは株式市場からは厳しい評価を受けた。主に新興国向けの「5c」は価格が高すぎ、「5s」は「形勢を一変させるような新機能に欠ける」という指摘がある一方、ドコモの参入などをプラス材料とする評価もある。(ロイター) - “コンテンツは無料”に慣れきっている中国人 人気の日本発アニメ・コミック
「海賊版天国」と揶揄される中国だが、改善している面もある。海賊版対策として正規コンテンツを無料配信するビジネスモデルが広がった結果、中国人は無料に慣れきっているという。現地からのリポート。 - 中国の「非ネット世代の中年」と「微信」(WeChat)で伝播する市民デモを追った
中国南部の雲南省・昆明で化学工場建設に反対するデモが起きた。デモの様子は中国版Twitter「微博」のほか、ユーザーが4億人を超えるLINEのライバル「微信」(WeChat)でも広がっていった。そんなデモの主役は反日デモの場合とは異なり……山谷氏による現地からのリポート。 - 変わる「中国的幸福論」 「2ちゃんねらー」「干物女」的な「ディャオスー」現る
経済の失速に大気汚染。GDP向上こそ幸福につながると努めてきた中国で「幸せって何?」と価値観が変わりつつあるという。ネットでは“結婚なんかできそうもない”自虐的な「ディャオスー」が現れ──山谷氏による現地からのリポート。 - 中国政府、自国の“ネット右翼”に困惑し始める 嫌がる人も多い“憤青”
「大気汚染の原因は日本」という中国の一部が取り上げた根も葉もない話に現地では「そんなわけはない」という常識的な反応が多かったことは知られてない。中国政府は“ネット右翼”や“ポピュリスト”に頭を痛め始めている──山谷氏による現地からのリポート。 - 反日デモ暴動に「あまりに愚かで悲しい」「義和団や文革のようだ」──中国のネット「理性愛国」の声
中国各地で暴徒と化した反日デモの映像が連日報道されている。だが中国人は反日デモに参加しない人が多数派。ネットでは暴力デモに反対し、「理性愛国」を訴える動きも多いという。現地からのリポート。 - 「愛国ではない、害国だ」 尖閣デモと公用車襲撃を否定され困惑する中国ネットユーザー
尖閣諸島をめぐって中国内では反日世論が高まった。一方で、反日デモや公用車襲撃事件について「愛国ではなく『害国』だ」という論評も現れており、中国ネット世論はそう単純ではない。現地からのリポート。 - 政治的思惑か、単なるミスか──中国から「.co.jp」サイトに一斉アクセス禁止の“なぜ?”
先週末の15日から17日にかけて、中国から「co.jp」ドメインの日本のサイトにアクセスできない事態が起き、現地の日本人に加え、日常的に閲覧していた中国人ユーザーも困惑。政治的思惑なのか、単なるミスなのか──
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.