制作期間2年以上、「三国志」LINEスタンプにかけた“原作厨”の情熱 “狂気の企画書”420ページ 「あのコマ」入らなかった理由は……(4/4 ページ)
「これは孔明の罠だ」「げえっ」――「三国志」のLINEスタンプが人気だ。企画者は自称“原作厨”の27歳。コミックス全60巻から2年かけて候補4100コマを選び出し、熱い情熱で社内外を説得して実現したという。
原作は聖典、フォントも変えたくなかった
「原作はマスターピース、聖典です」――“原作厨”の原さんは言う。スタンプも原作のコマをできる限りそのままを再現。モノクロだったコマに着色はしたが、原作のイメージ通りになるよう細心の注意を払い、コマが横長・縦長などスタンプの画角と異なる場合は、人気シーンでもスタンプ化をあきらめた。
せりふの文字サイズは拡大して打ち直している。原作は60巻全部同じフォント。原さんは元のフォントを使いたかったが、文字が小さいためサムネイル化した時に読めなくなってしまう。「原作の写植をそのまま使えないのは嫌で嫌で仕方なかったが、苦渋の決断で」拡大したという。
「こんなに待ってた人がいたんだ」 第2弾の可能性も
スタンプ公開日。原さんが個人のTwitterで告知したところ、いつもの何倍もRTされ、LINE内の課金ランキングでは「アンパンマン」「ふなっしー」スタンプに続く3位を獲得。「こんなに待ってた人がいたんだ。僕だけじゃなかった」と実感した。
スタンプがきっかけで三国志ファンの有名人と交流する機会を得るなど、新たなつながりも生まれた。「横山光輝三国志という作品の魅力のすごさ、浸透のすごさを感じました。趣味がここまで嵩じたのは幸せです」
実は、三国志スタンプ第2弾の制作を「交渉中」だ。「次があれば、『甘寧一番乗り』も、霊帝の『とてもつらい』も、関羽の『そんなものはない』も入れますよ!」と原さんは意気込む。候補のコマはまだ4000以上も残っており、第3弾、4弾……と出せるストックもある。
ただ「次が決まるかは、第1弾のダウンロード数次第」だ。「是非ダウンロードしていただき、ダウンロード済みの方は友人や家族、親戚にプレゼントしてもらえれば。今年は横山先生生誕80周年の記念の年。これを機に、横山光輝という作家にも注目してほしいです」
そこまで話し終えると原さんは席を立った。しばらくして戻ってくると、手にはかごに盛られたみかんが。記者に差し出して、言う。
「温州蜜柑でございます」
1つ手に取り皮をむくと……
中身がなかった。
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