消火器、下着──映画「ゼロ・グラビティ」のあのシーンはアリ? 宇宙開発のプロが解説
アカデミー賞7部門を受賞した映画「ゼロ・グラビティ」。そのツッコミどころと評価すべきところを宇宙開発のプロの視点から解説するページが公開されている。
リアルかつ迫力ある映像が高い評価を受け、アカデミー賞7部門を受賞した映画「ゼロ・グラビティ」。原題が「Gravity」だったのに変更された邦題も物議を醸したが、その内容には宇宙ファンから数多くのツッコミが入った。日本の宇宙開発に実績を持つ民間企業「宇宙技術開発」(SED)はこのほど、プロから見た同作品の「見方」をWebサイトで公開した。
【編集部から注意】以下の記事とリンク先は重大なネタバレを含みます。
同社が公開した「映画ゼロ・グラビティについて」では、作中の疑問点など30項目について解説している。
作品のプロットの根幹に関わるのは「軌道傾斜角の違い」だ。作中の主人公はハッブル宇宙望遠鏡(HST)を修理していたスペースシャトルから国際宇宙ステーション(ISS)へ、さらに中国の宇宙ステーション「天宮」へと移動する。だが、それぞれが周回する軌道の傾斜角は大きく異なる。
解説によると、「軌道傾斜角が異なる軌道へ移動させるくらいなら、別の宇宙船を打ち上げ直すのが常識」。このため、「スペースシャトルが無事で、そのエンジンを使ってHSTの軌道からISS軌道へ向かうとしても燃料不足で全く届きません」。なので、「ここは映画上の脚色と割り切って楽しく見ることをお勧めします」という。
「船外活動ユニットを使って自由飛行で輪を描いて飛行している」(「あれをやりたいので開発してと言われたら卒倒してしまうほどの難易度」)、「片手でハンドレールやロープをつかむのは無理」「消火器で軌道を変えて飛び移れるか?無理。」──など、ツッコミどころは多数あり、特にISS内で火災が起こるシーンは「これはISS関係者なら怒ってしまう個所」。ISS内には激しく燃えるものは持ち込めない上、あれほどの炎が迫ることも「絶対ありえません」。
ただ、SEDは「宇宙空間での描写を描いた映画の中では間違いなくこの映画は一番良い出来です」と制作スタッフに敬意を表している。「HSTの太陽電池パネルは最新型。最新の結合機構も装備、HSTのコンピュータ修理機材もかなり正確」という。
同社は「見方」を公開したことについて、「この映画を通じて、宇宙機の仕組みや運用などを知ってもらい、自分でもさらに調べてみたいと思うきっかけになれば」としている。
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