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「データの扱い、極めてずさん」 STAP細胞問題で理研が中間発表 画像切り貼り「いけないとの認識なかった」(1/4 ページ)

理研が「STAP細胞」の論文の疑義についての中間報告を発表。野依理事長は「未熟な研究者が、膨大なデータをずさん、無責任に扱い、本来あるべきでないミスが起きた」と話し、陳謝した。

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 理化学研究所は3月14日、所属する小保方晴子氏などの研究グループが英科学誌「Nature」に発表した「STAP細胞」の論文に不自然な点が相次いで報告されている問題で、調査委員会による中間報告を発表した。指摘された6点のうち2点は「不正に当たらない」と判断したが、残り4点は「現段階では完全にねつ造とはいえないが、継続調査が必要」とし、調査を続けている。

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陳謝する理研幹部。左から竹市雅俊CDBセンター長、川合眞紀研究担当理事、野依良治理事長、米倉実コンプライアンス担当理事

 同日、都内で会見した理研の野依良治理事長は「世間の多くのみなさまにご迷惑、ご心配おかけしたことをお詫びしたい」と陳謝。「未熟な研究者が、膨大なデータをずさん、無責任に扱い、本来あるべきでないミスが起きた」との見方を示し、研究所での倫理教育などを見直したいと話した。

 Natureに掲載された2本の論文については、理研発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)の小保方ユニットリーダー、笹井芳樹副センター長、丹羽仁史プロジェクトリーダーの3著者は撤回に同意しており、ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授をはじめとしたほかの共同著者に対しても、撤回を呼びかけているという。

 相次ぐ指摘を受け、STAP細胞の実在そのものが疑われる事態にまで発展している。調査委の石井俊輔委員長(理研上席研究員)は、「調査委は不正があったかどうかを調べるの役割で、科学的な検証はミッションを超えている」とし、STAP細胞の存在そのものについては科学者コミュニティー間での検証にゆだねている。

2点は「不正に当たらない」 マウスの胎盤画像のかぶりなど

 理研は1月29日にSTAP細胞に関するニュースリリースを発表し、記者会見を実施。翌30日に論文がNatureに掲載された。論文に関する疑いが理研の窓口に通報されたのは2月13日。予備調査を経て18日、調査委を設置した。

 調査対象は、理研CDBの小保方氏、笹井氏、丹羽氏と、以前理研CDBに所属し、現在は山梨大学教授の若山照彦氏。調査は各人に対して面談やテレビ会議などで数回行っており、小保方氏に対する調査は、面談1回、テレビ会議2回の計3回行ったという。調査対象者は4人とも、調査に協力的だという。

 調査対象となった疑義は6点。このうち、(1)Nature論文1(Nature 505:641-647(2014))の色つきの細胞の写真(Figure 1fのd2、d3)がゆがんで見える点と、(2)Nature論文2((Nature 505:676-680(2014))で、STAP細胞から作成したキメラマウスの胎盤の蛍光画像(Figure 1b)と酷似した画像が別の場所にも掲載されている(Figure.2g)点――については、「不正には当たらない」と判断した。


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 (1)については、Natureに掲載されたものはゆがんで見えるが、元画像にはゆがみがなかったという。調査の結果、画像を処理するコンピュータや解像度の違いによってゆがみが出ることが分かり、Natureが掲載のためにデータの解像度を下げ、JPEGなどに圧縮したことで生じたブロックノイズがゆがみの原因になった、と結論した。


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 (2)については、画像の削除し忘れミスだったという結論だ。2つの画像はいずれも、STAP細胞から作成したキメラマウスの胎児画像を若山氏が異なる角度から撮影し、小保方氏に提供したもの。当初は、ほかの画像との比較対象として、Figure.2gの画像とその説明も、論文に入れる予定だったという。

 だが若山氏の構想が変わり、Figure.2gの画像は不要になった(論文の本文中にもFigure.2gについての言及はない)が、画像を削除し忘れたまま投稿してしまったという。調査委はこの説明に「一定の論理性がある」と判断し、不正とは認められないとした。

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