売れる「嫌中本」? かたや中国はそんな日本をどう見ているのか──その4つのタイプ(3/3 ページ)
日本の「反中反韓本」ブームが論議を呼んでいるが、こうした日本の動きを中国人はどう見ているのだろう。中国人の日本に対する態度には4つのタイプがある──現地の事情に詳しい山谷氏のリポート。
4つめの「日本住み」は、主に日本在住の中国人のグループで、こちらも彼ら同士がSNSでつながっている。彼らは政治には関心を持たず、日本(人)を他のどのグループよりも詳しく知っている。中国に住む日本人は日本にいつでも戻れるような日本人らしさを持っているが、日本在住の中国人は、日本人らしさを取り込む一方で中国人らしさを失い、母国への復帰が難しくなるような人も多い。彼らは中国のメディアを見ることはあるが、日本を知らない中国人と討論したり、日本の生活の情報発信することには焼け石に水とばかりに消極的で、在日中国人のサイトやSNSグループで生活情報を交換している。
「中国人は日本を全く理解していない」
昨年夏、「騰訊」(Tencent)のポータルサイト「qq.com」で、qq.comの編集者と中国人日本研究者との対話記事が掲載された。編集者は「中国人(ネットユーザー)のイメージする日本といえば、イコール軍国主義とか靖国参拝とか性風俗産業のイメージしかない」と指摘したのに対し、在日中国人作家の李長声氏は「親日の中国人にしても、やはり日本を断片的にしか見ておらず、いずれにしても中国人は日本を全く理解していない」と嘆いていた。中国メディアでは、日本の政治などのニュースは報じるが、それ以外が報じられことはあまりない。
都知事選で田母神氏が予想以上の票を獲得したことについた背景について、中国では「若い低所得者層が転じたネット右翼が台頭している」とテレビやポータルサイトの報道で伝えられた。「ネット右翼」が低所得者層だというのは、朝日新聞がそう分析していたことと、中国の憤青も低所得者層であるから自然だ──ということで、このニュースを扱う中国のどのメディアも強調している(ちなみに「ネット右翼は低所得」という見解に、書籍『ネット右翼の逆襲』の著者である古谷経衡氏は「30、40代の大卒中流層」だと反論している)。
「ネット右翼台頭」の報に、「日本嫌い」派は日本に改めて嫌悪感を示した。一方で「日本どうでもいい」派はうっすらとこうしたニュースを耳にする程度。「日本好き」派はそれでも日本を前向きにとらえる傾向が強かった。
一方、日本の書店に反中国・反韓国本が積まれているという件については、日本での問題提起と議論がTwitter(中国では原則利用できない)が中心だったためか、紹介したサイトは親日なアニメ・ゲーム向けサイトだけだった。しかし日本で「ネット右翼」が台頭し、書店には反中国本が積まれているというニュースには今までになくインパクトがあったからか、こうした記事へのアクセス数は他の記事よりもかなり多かった。
こうした情報は「日本人は中国をよく思っていない」という日本の一面を中国に知らしめたが、それでも親日の人は親日を貫き通す。とはいえ彼らの情報源はいわゆる2ちゃんねるの「まとめサイト」。2ちゃんねるの「転載禁止」騒ぎのあおりで、まとめサイトの更新頻度が減り、まとめサイトを翻訳した記事も掲載が難しくなっているため、親日な人への最新の日本関連ニュースが止まっている。中国側にしろ日本側にしろ、何か打開策がないと日本の情報がストップしてしまう恐れもある。
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