米国スタイルで“チャイニーズ・ドリーム”をつかんだ百度:現代中国インターネットの覇者たち(2/2 ページ)
今や6億1700万人を超える中国のインターネット人口。その巨大市場を作り上げたといっても過言でないのが、検索サービス大手の百度だ。北京本社への取材などから同社の成長をひも解く。
モバイル志向の強い中国のユーザー
元々はPC向けにサービスを提供してきたが、上述したように中国ユーザーの“モバイル熱”の高まりを受け、百度も2011年ごろからサービスのモバイル化に本腰を入れ始めた。
ブラウザで利用する各種サービスのスマートフォン/タブレット端末対応を進めたほか、現在、iOS向けとAndroid向けに数十種類のアプリを用意。検索や地図、オンラインストレージ(百度云)など主要なサービスが中心となっており、ダウンロード数1億を超えてアプリは14個ある。
現在、モバイルで検索のアクティブユーザーは1日当たり1億6000万人で、中国のAndroidデバイスの85%は百度の検索エンジンをデフォルト設定しているという。収益面では、検索サービスの利益全体のうち約2割以上がモバイルだという。ユーザー数、収益性ともに、今後モバイルの比率が高まっていくのは間違いなく、特にユーザー数については、「2014年中にモバイルがPCを追い抜く」と百度のある幹部は鼻息が荒い。
本社オフィスの雰囲気はまるで米国企業のよう
創業以来、百度は北京大学や清華大学の近隣地区である、北京市北西部の中関村に本社を構える。この地区は古くから東京・秋葉原のような電気街として知られているが、それに加えて、今ではIT企業や研究所、ソフトウェアパークなどが集積するハイテク産業特区としての役割を持つ。百度のほか、Lenovo(聯想)、Alibaba(阿里巴巴)、Neusoft、米Intel、米Microsoft、米IBMなど国内外合わせて約2万社のIT関連企業の拠点がある。「中国のシリコンバレー」と言われるゆえんだ。
現在の百度の本社オフィス棟は2009年11月に完成。地上5万9000平方メートル、地下3万2500平方メートルの土地に高さ30メートルの社屋を建設した。ちなみに、新本社の設計は、北京オリンピックのメイン会場となったスタジアム「鳥の巣」の設計者の所属会社によるものだ。現在、ここに5000人の社員が働く。内部はゆとりある空間設計になっており、オープンエリアには広々とした打ち合わせスペースが点在している。
エントランスから1フロア上がると、モンゴルの移動式住居であるゲルを連想させる建物が目に飛び込んでくる。これは社員用の休息施設で、ここで仮眠をとったり、更衣室として利用したりする。また社内にはトレーニングジムを完備しており、就業後に社員たちが身体を動かしてリフレッシュするそうだ。
オフィス棟内を回ると、Tシャツやポロシャツにジーンズ姿の、大学生さながらの若者たちを多数見掛けることができる。社員の平均年齢は26歳前後。一昔前の中国企業のイメージとは程遠い、自由闊達な雰囲気が感じられる。李CEOをはじめとする経営幹部には米国への留学経験者が多く、これも彼らが築き上げた文化の表れだと言えるだろう。
百度のコアバリューは、「简单可依赖」。シンプルで信頼性が高いという意味だ。サービスのコンセプトとしてもこの点を重視しているが、企業組織もできる限りシンプルにすることを心掛けているそうだ。「末端の社員でも経営層と容易にコミュニケーションを取ることができる。上下関係はない」と同社の広報担当者は力を込めた。
次回は、百度の“ナンバー2”である李Xin晢CFO(最高財務責任者)へのインタビューから、同社のビジネスにおけるストロングポイントや成長戦略、さらには企業として目指すべき姿などをお伝えしていく。
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