LINE、自作スタンプが作るクリエイターのオアシス 目指すは「家が買えるくらい稼げる場所」(2/2 ページ)
LINEでユーザー自作スタンプの販売が始まってから1カ月。世界4億5000人超のユーザーに向けた開放も見据え、クリエイターが「家が買えるくらい稼げる場所」を目指すという。
アートとしての幅も広く、タッチもさまざま。直前のメッセージを指差しているイラストが並ぶ「上向き子」(バカゾクあいこさん)は、LINEのメッセージ内で使われることを想定しているからこその表現だ。渡辺さんが最近気になったスタンプの1つがシュールなキャラクターたちの詰め合わせ「楽しいキャラクター達」。「使う人を選びそうというか、誰もが『かわいい!』と思うものではないはず(笑)。バリエーションが増えることで、より自分の好きなものを選ぶ楽しさが出てくると思う」(渡辺さん)。
1カ月が経ち、売り上げは好調だが、従来の有料スタンプの売り上げは減っていないという。これまではキャラクターの魅力で訴求する部分が大きかったが、クリエイターズスタンプはニッチな需要の表現も多く、“キャラ物”にあまり興味がない層やこれまでスタンプを買ったことのない人にも「これなら使いたい」と興味を持ってもらえているのでは――と分析する。
売り上げの50%がクリエイターの手に渡る還元率の高さも話題だ。社内でも何度も議論を重ね、インパクトがある数字でまずは筆をとってもらいたい――と50%に落ち着いたという。
「半分も、と話題になる一方で『50%は取り過ぎ』という声もあったが、もろもろ差し引くとLINEの手元に残る分は正直ほとんどない。事業として収益を立てることが目的ではなく、LINEを使ったコミュニケーションをさらに増やすこと、表現の幅を広げることがミッション」(渡辺さん)
プラットフォームとしての目標を示す1つが「家が買えるくらい稼げる場所」。開始から1カ月の実績を見ると、売上10位までの平均販売額は470万円、30位までは260万円となっており、すでに“サラリーマンの月収程度”を超える利益を得ている人数は「一握りというレベルではない」という。LINEスタンプの制作で食べていける人が出てきたらうれしいとしつつ、少数精鋭で人気クリエイターを盛り上げていくだけでなく、家賃をまかなえる程度、月々のお小遣いをリッチに──など、何気なく参加した人にも広く喜んでもらえるような“垣根は低いが当たるとすごい”発表の場所となることを目指す。
イラストを描いて発表しているユーザーのほか、産休・育休中の主婦や、趣味で絵を描いている学生なども目立ち、「40種類セットのショーケースのようなイメージ」で趣味の延長で気軽に参加してほしいと話す。スタンプからイラストの仕事やグッズ制作、アニメにつながるなど、他のキャリアにつながっていく事例も出てくれば――と期待を寄せる。
順次海外のユーザーにも開放していく予定で、さらに市場は広がる見込み。現在、日本以外に台湾、タイ、インドネシアで販売しているが、台湾で1番人気はバナナのキャラクター、日本のティーンに人気のカナヘイさんは海外でも人気――など各国で相違のあるランキングも面白さだという。さらに対象国を広げていく予定で国境を越えるスタンプの流行が生まれる可能性も。「『これブラジルで人気あるやつらしいよ』と日本で火が付くこともあるかもしれません」(渡辺さん)
「ユーザーの好みは千差万別で、あなたのイラストを気に入ってくれる誰かはきっといるはず。こちらからはなるべく制限を設けず、自由な発想で自分が使いたいものを楽しんで作ってほしい。イラストを描く人の発表の場として、企業のマーケティングツールとして、当たり前の選択肢に育てたい」(渡辺さん)
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