「超個人主義」日本のクリエイターが世界に挑むために――1000万ユーザー超えた“チームpixiv”の描く未来(3/3 ページ)
1000万ユーザーを超えたイラストSNS「pixiv」。世界展開を進めながら、「超個人主義」の日本人クリエイターたちによる世界で勝てる“チーム”が生まれる場所を目指す。
モザイクありきのクリエイティビティ
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)や児童ポルノ法の改定などをめぐり、表現規制の在り方が盛んに議論されている昨今。片桐さんは「どちらがいいかと言われたら緩い方がいいだろうが、規制があることで生まれるクリエイティビティーもある」というスタンスだという。
「例えばアダルトビデオはモザイクをかけるからこそのエロさがあるわけで、全部おおっぴらにすればもっとエロくなるわけではない。制限を前提に作るから、見せ方や撮り方、表現が変わってきて、そこにオリジナリティーが生まれる。規制が強くなったからといって作る人が減ることはありえない、人の創作意欲はそういうものじゃない。仮に新しいルールができたとして、そこから生まれる新しい表現や方法はそれはそれで楽しみ」(片桐さん)
村上隆さんが率いるカイカイキキとの共同ギャラリー「pixiv Zingaro」でアニメやゲームとコラボした企画展を多数開催するなど、出版社をはじめとしたコンテンツホルダーとも連携。プロのクリエイターを産む上で、2次創作を含む同人市場の存在感が大きい現状を踏まえ、「コミケ等がこれまで担ってきた役割の一部を担いながら」連携してよい形で盛り上げていければ――と展望を話す。
pixivという“チーム”の挑戦
目指す理想は「クリエイターがpixivだけで食べていける」状態。昨年リリースした物販サービス「BOOTH」はそのヒントの1つで、昔から考えていた機能の1つだという。
「音楽も動画も3Dデータも面白そう、広げたい構想はいろいろあるんですけどね」としつつ、新たな目標や戦略を固く定めるのではなく、ユーザーに求められているものを柔軟に取り入れながら、目の前の課題に粛々と対処していく姿勢だ。
「僕は特に好きなものや趣味があるわけではなく、人気があるものに興味がある。会社は『好きなことだけやれていれば幸せ』という発想だとただの趣味になってしまうし、ビジネスでやる以上『売れてないものはだめ』という気持ちでいたい。人気のあるものを作り続ける、新しいものに挑戦する、もっと多くの人に届ける――それがpixivという“チーム”の挑戦」(片桐社長)
関連記事
- pixivユーザーが1000万人突破 開始から6年半で
イラストSNS「pixiv」の登録ユーザー数が1000万人を突破した。 - pixiv、複数イラストでアニメのように動かせる新機能「うごイラ」
イラストSNS「pixiv」に、複数のイラストをアップロードすることでアニメのように表示できる新機能「うごイラ」が加わった。 - niconico「クリエイター奨励プログラム」、総支払額8億3000万円超 「これだけで食べていける人も」
ドワンゴが動画や共有素材、ツールの制作者に支払う「クリエイター奨励プログラム」の総支払額が8億3000万円を超えた。現在はプレミアム会員収入の一部を当てているが、原資増額のために動画広告の導入にも踏み切るという。 - コミケのような空間をネットでも――急成長「pixiv」が描く“第2章”の青写真
コミケのように、さまざまな作品が生まれ、売買される空間へ――急成長を続ける「pixiv」が次のステップへ進もうとしている。有料会員制度「pixivプレミアム」はそのための入り口という。 - 「変化が激しすぎるかも」――急成長「pixiv」の1年を追う
「変化が激しすぎるかも」――pixivはこの1年、会員数・PVは8倍に、サーバ台数は10倍に増えた。運営元社長ですら「1カ月先のことも分からない」と話す。pixivの“ゆく年くる年”とは。 - 「ネットにイラスト、こんなにあるとは」――10万ユーザー突破したイラストSNS「pixiv」の“想定外”
イラストSNS「pixiv」のユーザーが10万を突破。「1000人くらいしか集まらないだろう」という予想は大きく外れた。「他人のイラストを楽に探したい」と、同人イラスト描きのプログラマーが開発した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.