ボカロP、絵師、小説家――“ネットクリエイター”支援へ新団体「JNCA」 「ブームからカルチャーへ」(3/3 ページ)
「ボカロP」「絵師」など、ネットからメジャーシーンへ活躍の場を広げるクリエイターを支援する日本ネットクリエイター協会(JNCA)が始動。理事として参加するクリプトンの伊藤社長やKADOKAWAの井上専務らが、ネットならではの創作のあり方やその支援について語った。
変わる既存企業の役割
これまで同様の団体がなかったのは「労力は必要だが、ビジネスにならないから」(横澤代表理事)。現状に合わせて制度を設計していくのは簡単ではない。「スターが生まれるのを見守る段階は終わり、これからは彼らの人生を支えていく覚悟の長期戦」と、ニコニコ動画以外の場所で活躍するクリエイターも含め、広く協会への参加を呼びかける。
新たに加わった理事の2人も、コンテンツ業界が転換期にあることを強く感じている。
「これまでレコード会社や出版社が担ってきたのは、制作、プロモーション、そして流通の3点だが、インターネットを介してすべて1人でできるのが今の時代。既存企業の役割は変わらざるを得ない。“ネットクリエイター”の定義自体もまだ曖昧で、これから概念はもっと広がっていくと思う。僕たちが今提案しているビジョンは最低限のもので、むしろ作り手のみなさんにすべきことを教えてほしい」(伊藤社長)
「音楽も漫画も小説もデジタルで次々とコピーされていく危険度が高い今、いたちごっこで追いかけ続けるだけでなく、文化が続いていくための新しい方法も同時に作っていかなければ。日本が世界に誇れるエンターテインメントを作っていることは事実で、コンテンツに対する考え方の転換点がまさに今だと思う。支持される作品を作り出しているクリエイター本人たちと直接触れ合い、悩みや要望を聞きながら、これからできることを一緒に模索していけるのは業界の未来を作るためにも貴重な機会になる」(井上専務)
理事:アニメイト 國枝信吾取締役
ネットで火がついたコンテンツがフィジカルな商品として、店頭でもどんどん売れるようになっている。JNCAでの取り組みを通じ、ネットクリエイターにどんなリアルの場やデジタルの場が必要になっていくのかを知り、文化を広げていくことに少しでも役に立てればと思う。
理事:エクシング 高木司マーケティング統括部長
CDの販売減少をはじめ音楽業界の事業構造が変わりつつあり、職業として音楽業界を目指す人々のみならず、クリエイティブな仕事全体への興味や関心が薄れているのではという危機感を感じている。Web、ネットの世界で活躍するクリエイターそれぞれが職業として保証され、創作に没頭できる環境づくりこそ、今後の日本の新しい文化の発展につながっていくはず。意見交換や協会の活動がシーン全体のより良い展開につながるよう努めたい。
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