独学の日本画で描く妖怪の世界――アマヤギ堂さん:教えて! 絵師さん
妖怪や動物の妖しげな世界を描いた日本画で、独特の存在感を放つアマヤギ堂さん。お気に入りの作品は「特にないです」と話す理由は……?
美術系短大のデザインコースを卒業後、印刷会社所属のグラフィックデザイナーとして仕事を始めました。周囲に絵を描く人材が少なかったため、入社早々からイラストを描く仕事ばかりが増えていき、気がつけばグラフィックデザイナーではなくなっていました。どうしてこうなった。
現在はフリーランスのイラストレーターとして、雑誌の挿絵や本の表紙、パッケージデザインに用いるイラストなどを手がけています。趣味と仕事の差はあいまいで、毎日何かしら描いています。駆け出しのころは余裕がなく依頼された絵だけしか描いてなかった時期もありました。精神的には辛かったですが、作風の幅は広がった気がします。
日本画は習ったことがなく独学です。妖怪などの作品を公に発表するようになったのはここ10年くらいでしょうか。幼いころから不思議なものや怖いものが大好きで学生時代は怪しげなものばかり描いていました。
浮世絵師を心から尊敬しているので「絵師」と名乗っています。名刺にも刷り込んでいるのでお渡しするともれなくツッコミが入ります(笑)。特に神として崇めているのは葛飾北斎、歌川国芳、河鍋暁斎、伊藤若冲、月岡芳年、小村雪岱。現代作家だとやはり水木しげる氏がダントツです。藤子・F・不二雄氏にも影響を受けていると言えるかも……。初めて模写した漫画は「ドラえもん」でした。
ラフを描くのはぺんてる「グラフ1000」で、構図を直すのにPhotoshopを使っています。線画メインのものはタチカワGペンと毛筆です。アナログ描く際は鉄鉢と水干絵具、そして楮(こうぞ)の和紙ですね。ペンタブレットは持ってはいますが、線が上手く描けないので補助的なツールとして利用しています。
最近は本当にいろいろな方に絵を見ていただけてる手応えがあり嬉しいです。海外の方からファンメールをいただいた時は驚きましたし、憧れの荒俣宏氏や祖父江慎氏にお会いする際は緊張してガクブルでした。まだまだ精進が足りませんし、自分より巧い絵を描く方はたくさんおられるので、今後どうなっていくかは分かりませんが、これからも描き続けていければいいなと思っています。
仕事としては「妖怪じゃないものでお願いします」という依頼の方が圧倒的に多いので、もっと“妖怪三昧”できるように努力している最中です。商業ベースのクオリティとしては問題なくとも、感性を殺して描いたものはどこかよそよそしく感じます。己の手癖を見極めて素直な気持ちで描いたものがやはり一番出来がいいと思うのです。
教えて! 自慢の1枚
自分で描いた絵を出来るだけ客観的に見たいので、お気に入りの絵というものはないです。
人気があるなあ、と思うのは以下の2作です。
個人的に少し特別な思い入れがあって描いた絵がこちらです。
自分の絵のよいところってあまり分からないんですよね……数日経つと粗が見えてきてガッカリすることの方が多かったり。みなさんに喜んでいただけるのが何より、と常に考えています。よく見ると何かいる! という小さなあしらい、小ネタを仕込むのが大好きです。
関連記事
- 教えて! 絵師さん:“きれいでかわいい”だけじゃない、“ミステリアスな女性”を美しく――マツオヒロミさん
ネットを中心に活躍する絵師さんにフォーカスする連載企画「教えて! 絵師さん」。第2回は、1度見たら忘れない、鮮やかな色使いの少し影のある女性が印象的なマツオヒロミさんです。 - 教えて! 絵師さん:こだわりは「目」――“ラスボス”イラストも手がけるおはぎさん
ネットを中心に活躍する絵師さんにフォーカスする連載企画「教えて! 絵師さん」がスタート。第1回は小林幸子さんの動画イラストなどを手がけるおはぎさんです。 - ワコム、iPad用スタイラスペン発売 クリエイターモデルはペン先が細く、より繊細に
ワコムはiPad用スタイラスペンの新製品4モデルを発売する。細さを追求しメモ書きに適したタイプ、精度を高め繊細な描画が可能なクリエイター向けなどをそろえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.