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「年に100曲作った」――“ひどい耳コピ”で笑われた中2、6年でプロ作曲家に ネットとボカロがつないだ成長の軌跡(2/3 ページ)

メロディもテンポもめちゃくちゃで「ひどすぎる」と笑いを誘った楽曲「中2マリオ」。その作者が7年後に公開した楽曲があまりに美しく、「同じ作者のものと思えない」と話題になった。成長の秘訣は「とにかく作ること」。1年で100曲作った年もあったという。

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 Singer Song Writerは五線譜に音符や休符を入力して作曲するソフトだが、当時は楽譜が読めなかったため、手探りで入力しては実際に音を鳴らし、原曲と比べながら作っていた。完成した曲を聞き、どこかおかしいとは気づいていたが、「修正のしかたもよく分からなかった」という。

 それを偶然、兄が聴いて大爆笑。マリオのほかのBGMも作り、ニコニコ動画に投稿するようすすめた。言われた通りに作って投稿してみたところ、「ゲーム」カテゴリのランキングで1位を獲得するほど大人気に。何が受けているのかはよく分からなかったが、「F5を押すとコメントや再生数がどんどん増えていくのがすごく面白かった」。

 「別のゲームでも作ってみて」と兄に依頼され、「ドラクエI」「星のカービィ」のBGMの耳コピ動画を作成してニコ動に投稿。「原曲が行方不明」などと視聴者の爆笑を誘った。

1年に100曲作った

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pixivで自作イラストも公開している

 その後も音楽を作り、ネットで発表したり、CDにしてイベントで売ったりした。高校時代の夢はゲームのサウンドクリエイター。「サウンドクリエイターにはたくさん曲を書く能力が必要」と聞き、「1年に100曲作ろう」と決めて実際に作った年もある。楽器は使わず、曲作りはすべて打ち込み。楽曲動画の背景イラストも自分で描いている。

 楽曲制作ソフトは無料のものを中心にいろいろ試した。「ドレミ」のテキストで作曲できる「サクラ」というフリーソフトも触ったし、ピアノロールで作曲できる「ピストンコラージュ」は今でもメインの作曲ソフトとして使っている。

 メロディと歌詞を入力すると、その通りに歌ってくれるVOCALOID(ボカロ)ソフト「初音ミク」にも夢中になった。ニコニコ動画で発表されるミク曲に惹かれ、中3のころ、お年玉を貯めて購入。ボカロ曲も作り始め、“ボカロP”(ボカロで曲を作ってニコ動などで発表する人)仲間とも出会った。

ニコ動とボカロがつなぐ、作曲家の絆

 「ニコ動やボカロがなかったら、全然違ったと思います。今みたいにたくさんの人とつながることはなかった」――黒魔さんは振り返る。

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黒魔さんのTwitter

 ボカロPはTwitterアカウントを持っている人が多く、ほかのジャンルの作曲家よりもネットで交流しやすかったという。Skypeチャットで話したり、お互いの曲を聴き合ったり、一緒に音楽イベントに出たり、同人CDを作ったり――たくさんの仲間と交わってきた。

 口べたで人付き合いが苦手だが、音楽を通じて人と交流できるのがうれしいという。「あるイベントで、自分の曲が採用されたゲームのキャラクターのぬいぐるみをくれた人がいたんです。自分の曲を受け取ってくれて、別の物で返してもらえるのがすごくうれしくて。音楽でコミュニケーションが取れてるなって」。

 心動かされた景色や、友達や家族への感謝、つらかったことなど、日々起きたことを「日記のような感覚」で曲にしている。音楽仲間への思いを曲にしたことも。「1人で作っていたら、書けない曲もあったと思う」。

 ニコ動に投稿した作品の中で、“耳コピ”シリーズに次ぐ再生数を獲得した「ラストバトル」は、人付き合いが苦手で悩んでいた時期に、「悩みとかモヤモヤを全部出そう」と作った曲。予想以上にたくさんの人に共感してもらえたと喜ぶ。

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