「眠っていたアイデア」を形に――ソニーの社内ベンチャー発、電子ペーパー時計「FES Watch」ができるまで:連載・クラウドファンディング「成立」のその後(3/3 ページ)
クラウドファンディングサイトで注目を集めたプロジェクトの“資金調達のその後”を追いかける本連載。第3回は、ソニーが社名を出さず開発したことでも話題になった電子ペーパー時計「FES Watch」誕生の舞台裏。
クラウドファンディングでネット上に広がった「当事者意識」
14年9月にクラウドファンディングプロジェクトをスタートすると、予想を超える支援者の熱い想いや声に驚いたと杉上さんは振り返る。サポーターたちから寄せられた声は、ソニーでこれまで製品開発時に行ってきたユーザー評価とは趣が異なっていたという。
FES Watchプロジェクトを支援した人の中には「商品そのものがほしい」というユーザーのほか、「ファッションのデジタル化」というコンセプト自体に共感して支援してくれるサポーターも多かったという。実際、支援者へのリターン(報酬)内容に含まれている“FES Watch開発メンバーとの座談会チケット”を目当てに支援したサポーターも少なくないそうだ。
こうした動きの背景には「自分も新商品の開発に参加している」というサポーターの強い「当事者意識」があったのでは――と杉上さんは話す。そんなサポーターの声を受け取ることで、製品開発により一層の力が入ったという。
今後の展開は“未定” 「サポーターの声を参考に考えたい」
FES Watchは今年1月に2回目のクラウドファンディングを終え、1回目と合わせて約1900万円もの資金調達に成功した。現在は量産を進めており、サポーター向けには今年5月以降に製品を出荷できる予定という。
だが、FES Watchの一般販売の有無やソニーブランドとして展開するかどうかなど「詳しいことはまだ決まっていない」のが現状だ。今後の展開について杉上さんは「支援いただいたサポーターの意見も参考にしながら考えていきたい」と話している。
ソニーの新規事業創出部は現在、FES Watch以外にもさまざまなプロジェクトを進めているという。プロジェクトの特性によっては今回のようなクラウドファンディングの活用も検討しているそうだ。
ソニーのような大企業がクラウドファンディングを活用し、これまでにない形で消費者の声を拾い上げながら一緒に製品を作っていく――クラウドファンディングが生んだそんな新しい商品開発のあり方は、今後ますます広がっていくかもしれない。
Makuakeとは?
2013年8月にオープンしたクラウドファンディングプラットフォーム。2014年11月時点までに300件以上のプロジェクトが実施され、1つのプロジェクトで100万円を超える大型資金調達に成功するケースも複数登場している。
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