映画公開記念! ダース・ベイダー VS. シャア 魅力的な“悪”の条件:部屋とディスプレイとわたし(4/4 ページ)
1977年と1979年、アメリカと日本で誕生した2人が今も人を惹きつけている。それぞれ2つの名を持ち、素顔を隠したダース・ベイダーとシャア・アズナブル。この魅力的な2人の共通点と、現代のわれわれにも通じるその“内面”を作家の堀田純司さんが読み解く。
誰もが仮面をかぶる時代に
「やるべきこと」「やりたいこと」そして「やれること」。この3つの極で引き裂かれる苦悩。それが彼らをして共感される悪たらしめた要素でしたが、後の娯楽作品は彼らの苦悩を見習い、むしろ主人公側にアンチヒーローを持ってきたり、「主人公がとにかく悩んで、なかなか戦わない」といった作品が生まれてくるようになりました。ダース・ベイダーとシャア・アズナブルは、その偉大な先駆者だったと思います。
現代では人間関係もある意味で洗練され「キャラ」を演じることで、直接ぶつかることがないようにする技術も、ふつうに使われるようになってきました。それにSNSが普及し、サムネイルと簡単な自己紹介文で自己を演出していく営みを、誰もが行うようになってきてもいます。この世界では常に自己演出がつきまとう。「自然体な俺」をアピールすることもまた、それが演出という枝にからみとられる世界です。
つまり誰もが仮面をかぶる時代。それゆえにこれからもまた、新たなる仮面の悪役たちが現れてくることでしょう。
これからもあなたがフォースと共にあらんことを。全人類が早く叡智を授かりますように。
堀田純司 作家。1969年大阪生まれ。主な著書「僕とツンデレとハイデガー」(講談社)、「メジャーを生みだす マーケティングを越えるクリエーター」(KADOKAWA)などがある。「ガンダムUC証言集」(KADOKAWA)では編著も手がけた。「ガンダム」ではアルテイシア様、ディアナ様、ハマーン様など「様派女性キャラ」のファン。「スター・ウォーズ」ではエピソード5のハン・ソロとレイア姫の「相互二重ツンデレラブコメ」描写が好きだ。
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