目指すは、香りのウォークマン?――男性も使える小型アロマ「AROMASTIC」に開発者が込めた“ソニーの系譜”(2/2 ページ)
持ち運べるスティック型のアロマディフューザー「AROMASTIC」をソニーが開発し、自社のクラウドファンディングで支援を募っている。「ウォークマンが音楽で切り開いたような文化を、アロマでも目指す」――その狙いを開発メンバーに聞いた。
「タブレット菓子の代わりに」 男性も“習慣化”するアロマ
開発段階では女性をターゲットとし、ストレスがたまった時や注意散漫な時に、気分に合わせて選べるアロマを意識した研究を重ねた。「手にハンドクリームを塗っても、1種類の香りしか楽しめない。何種類も持ち運べると楽しいのに……と普段から思っていた」(角田さん)
「忙しく働く女性や、仕事の都合上、香水を使えない医療従事者などが、ちょっとした時間に使えれば」(角田さん)とも考え、女性目線のアイデアを出したのが始まりだったが、モニター試験やテストマーケティングを始めてみると、意外にも男性からの反響も大きかったという。
シンプルな外見に加え、ポケットやバッグに入れて持ち運べる手軽さで、「男性でも“文房具感覚”で使える」(藤田さん)ことがプラスに働いたと説明する。「市販のアロマディフューザーのような手間がかからず、自分の周りだけに香り、周囲も気にならないので、ハードルを下げることにつながった」(藤田さん)。タブレット菓子の代わりに、眠気覚ましやリフレッシュのツールとして『習慣化』する男性ユーザーもいるといい、実際のモニターからは「貸し出し期間が終わって、返却後には喪失感を感じる」といった“AROMASTICロス”の声も少なくないという。
寒川さんは、開発者目線では「香りを健康のバロメーターに使うユーザーがいたことが面白かった」と話す。寒川さんによると「今どんな香りが好きかは、体調によって変わる」といい、昨日は今日と比べてリラックス系の香りを好きな場合は疲れ気味――といった具合に、自分の状態を知るツールになるという。「従来のアロマや香水と違い、自由に数種類を持ち運べるからこそ、新しい発見を楽しめるユーザーが出て来た」(寒川さん)。
普段からクラウドファンディングを利用するガジェット好きの男性が「奥さんにプレゼントするために買う」(角田さん)というケースも。「最近では経営者やスポーツ選手が、緊張を和らげる手段にアロマを活用している」という背景もあり、「香りは情動を司る大脳辺縁系に直接作用するので、男女は関係なく、当初はプレゼント目的でも、実際に使うとくせになるのかも」(角田さん)。
ウォークマンが音楽で切り開いたような、新しい香りの習慣・文化を
藤田さんは「AROMASTIC」のコンセプトとして「SELECTABLE」「PORTABLE」「EASY」「PERSONAL」という4つを挙げる。「好きな香りを持ち運んで、周りを気にせず楽しめる――というのは、『ウォークマン』が音楽で実現した機能とよく似ている」(藤田さん)。
「ウォークマンが手軽に音楽を持ち出すというカルチャーを生み出したように、香りの世界で新しい習慣・文化を創り出したい。入社当時から、ずっとその志を大切にしてきた。香りの“習慣化”で、新しい感性価値を、日常生活にプラスできれば」(藤田さん)
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