東京五輪、審判はロボットに?――富士通、体操競技の採点をセンサーで支援 実証実験へ
富士通が、人間の動きを捉えるレーザーセンサーと骨格認識技術を活用し、体操競技の採点を支援する技術を開発。日本体操協会と共同で、2020年の東京五輪までに実用化を目指すという。
富士通は5月17日、人間の動きを立体的に捉えるレーザーセンサーと骨格認識技術を応用し、体操競技の採点をサポートする技術を発表した。日本体操協会と連携し、今年秋から実証実験を始め、2020年の東京五輪までに実用化を目指すという。
レーザーを1秒間に230万回射出し、人間の形や動きを立体的に捉える。3Dデータを基に関節位置などの3次元座標を推定し、ひじやひざの曲がり具合を把握する骨格認識技術も活用する。競技の判定に必要な数値データをリアルタイムで抽出し、審判が採点の参考にできるシステムの構築を目指すという。従来のモーションキャプチャーと違い、競技者の体にセンサーを装着する必要がなく、演技の邪魔にならないのも特徴だ。
同システムのベースとなる技術は、2012年の時点で開発済みだったが、レーザーの射出機と競技者との距離が大きくなると解像度が低くなり、スポーツの適用は難しいとされてきた。同社は4年の歳月をかけ、距離に応じてレーザーの画角を調整し、解像度を一定に保つ技術を開発。骨格認識技術も改良し、日本体操協会が選手のデータやテスト環境を提供することで、実用可能なレベルまで精度を高めていくという。
同協会の二木英徳会長は「近年、体操の技術は“超人的”に進歩している」と説明。演技が高速化・複雑化し、目視の採点が難しくなっている上に、4年に1度のルール変更もあり、「審判が技を見逃す事態が起こりかねない」(二木会長)と話す。
富士通の廣野充俊常務は、同技術を応用し、採点以外に選手の指導や練習に生かしてももらえれば――と展望を話す。「体操競技に限らず、フィギュアスケートや飛び込み競技など他の採点競技にも導入していきたい」(廣野常務)と意気込む。
「東京五輪の体操競技は、ロボットが採点するのではないか」――国際体操連盟の渡辺守成理事は、昨年10月に富士通の担当者と「そう話したばかり」と振り返る。「観客からすると演技中の技がよく分からず、従来の採点方法は時間がかかるので、魅力が半減していた」(渡辺理事)とも指摘。採点や指導の精度向上だけでなく、観客が技や難易度をリアルタイムで分かるように配慮し、「体操の魅力を伝え、業界の発展につなげたい」(渡辺理事)としている。
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