衝突実験400兆回「待っていれば、絶対に来る」――新元素「ニホニウム」 名称案めぐる意見公募スタート
理化学研究所が発見した113番元素の名称案「ニホニウム」(nihonium)をめぐり、一般から意見を募るパブリックレビューが始まった。
理化学研究所(理研)が発見した113番元素の名称案「ニホニウム」(nihonium)をめぐって、一般から意見を募るパブリックレビューが、国際純正・応用化学連合(IUPAC)のWebサイトで6月8日に始まった。5カ月間実施し、集まった意見を基に正式な元素名と元素記号名が決まる。新元素の認定と命名はアジアで初めてだ。
同元素は、九州大学の森田浩介教授らが2004年7月、初めて合成に成功した。ロシアと米国の共同研究グループも別の手法で合成し、発見の優先権を主張していたが、15年12月に日本が命名権を獲得。理研が元素名案を「ニホニウム」、元素記号案を「Nh」と決め、16年3月にIUPACに提案した。
「待っていれば、絶対に来る」
「待っていれば、絶対に来る」――研究開始から9年、400兆回もの衝突実験を繰り返し、3個目の113番元素の合成を確認した時の気持ちを、森田教授は2013年のインタビューでこう答えている。
森田教授のグループは、03年9月から新元素の合成に取り組んできた。理研の重イオン線形加速器「RILAC」を使い、亜鉛の原子核を光速の10%にまで加速させ、ビスマスに照射。両元素が核融合を起こし、113番の元素を合成した。
04年7月に1個目、05年4月に2個目の合成に成功。06年にIUPACから「新元素を発見したグループは申し出よ」という呼び掛けを受け、発見の優先権を主張したが、合成の証拠が不十分となり、認可に至らなかった。優先権獲得を目指して合成実験を継続し、12年に3個目の合成に成功。実験開始から80日で1個目、続けて100日で2個目を合成したが、3個目には350日を要した。元素を衝突させた回数は400兆回にも及ぶという。
「1個目と2個目がラッキーだっただけ。3個目が300日を超えても、何も不思議ではない。待っていれば、絶対に来る」(森田教授)。
元素名の発表に際し、森田教授は「将来にわたり継承される周期表に、日本が発見した元素と名前が載ることは、大変光栄なこと」とコメント。周期表に載った「ニホニウム」を見て、科学に興味を抱く人が増え、日本の科学技術の発展につながる――そうなれば「大きな意義がある」(森田教授)としている。
関連記事
- 新元素の名称案「ニホニウム」に 日本が初めて命名権
理化学研究所が発見した113番元素の名称案が「ニホニウム」と分かった。 - しんかい6500、クジラの遺骸から新種の深海生物41種を発見 「飛び石仮説」解明に一歩
JAMSTECの潜水調査船「しんかい6500」がブラジル沖で発見したクジラの遺骸に、深海生物41種類が生息していたことが判明。ほとんどが新種の可能性があるという。 - 深海1万メートルは“騒音”だらけ マリアナ海溝最深部で調査
深海は静かな場所だと思われがちだが、実際はクジラのうめき声やスクリューの音など、騒音に満ちている――そんな調査結果をNOAAが発表した。 - はやぶさから微粒子、新たに100個 地球外の可能性「チャンス広がった」
「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルの中身を電子顕微鏡で調べたところ、由来不明の微粒子が新たに約100個見つかった。「地球外物質が見つかるチャンスが若干広がった」とJAXAの研究者は話す。 - 4兆度・原子も溶ける超高温状態を実現 理研とKEKなど成功
あの「ゼットンの火球」の4倍となる4兆度という超高温状態の実現に、理研と高エネ研などの研究グループが成功した。 - マウスを全身丸ごと透明化 理研・東大チームが成功
マウスの全身を丸ごと透明化し、臓器や全身の3Dイメージを容易に得られる技術を理研と東大のチームが開発した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.