東芝はこのほど、ディープラーニング(深層学習)の処理を低消費電力で実行する、人間の脳を模した半導体回路「TDNN」(Time Domain Neural Network)を開発したと発表した。スマートフォンなどの端末でディープラーニングを可能にするプロセッサの実現を目指す。
現在のディープラーニングは、大量の電力が必要な高性能コンピュータで行われている。スマートフォンやセンサーなどのエッジデバイスで実行するには低消費電力なチップが必要だが、データをメモリから演算回路に移動するのに大きな電力が必要なことが課題だった。データの移動を減らすには演算回路を完全に並列化し、その演算回路が利用するメモリを演算回路の直近に配置することが有効だが、チップサイズが大きくなってしまうため採用できなかった。
同社は今回、デジタル信号が論理ゲートを通り抜ける際の遅延時間をアナログ信号として利用する技術「時間領域アナログ信号処理技術」を演算回路に採用。ディープラーニングの1つの演算を行う演算回路を3つの論理ゲートと1ビットのメモリで実現し、チップサイズを小型化しながら演算回路を完全に並列化し、データの移動距離を減らすことで消費電力を削減した。
揮発性メモリ(SRAM)を利用したチップを試作し、画像認識を行ったところ、演算あたりの消費エネルギーを、これまでに学会で報告されている値の6分の1以下・20.6フェムトジュールに抑えられたという。
今後は、さらなる小型化・低消費電力化が可能な抵抗変化型メモリ(ReRAM)を使用したプロセッサを開発。デバイスの小型化に必要な技術開発を進め、センサーやスマートフォンなどでディープラーニングを可能にするプロセッサの実現を目指す。
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