「進撃の巨人」など無断複製、「自炊」代行業者を逮捕 データ使い回し、書籍裁断せず売却など「極めて悪質」
京都市の自炊代行業の男が逮捕。顧客から送られた書籍が重複した場合、過去のデータを使い回して提供。届いた書籍は裁断せずに古書店に売却していたという。
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の発表によると、京都府警は11月30日、権利者に無許諾で書籍をデジタルデータ化し、DVD-Rに複製・譲渡していた著作権法違反の疑いで、京都市左京区の自炊代行業の男(35)を逮捕した。
調べによると男は今年4月〜7月にかけ、2人の顧客から送られたコミックを電子データ化し、PCのストレージに複製した上で、DVD-R 3枚にコピーし、顧客2人に譲渡して代金計5700円を受け取っていた疑い。
男が複製した作品は「坂本ですが?」(KADOKAWA)、「未来日記」(同)、「進撃の巨人」(講談社)、「暗殺教室」(集英社)、「るろうに剣心」(同)、「アフォガード」(スクウェア・エニックス)などで、各出版社が告訴した。
京都府警の捜査員が、男が運営する自炊代行のWebサイトを発見して発覚した。男は2011年ごろから自炊代行事業を始め、これまでに約2万6000点相当の自炊代行を請け負い、少なくとも約750万円の売り上げがあったとみている。
顧客から送られた書籍が重複した場合、過去に複製したデータを使い回して提供。届いた書籍は裁断せずに古書店に売却し、利益を得ていたほか、顧客から書籍を送らせることなく、注文に応じてデータをDVDに複製して販売していたこともあるという。このような行為は「極めて悪質」で、「出版社・著作権者は看過できず、刑事告訴に踏み切った」とACCSは説明している。
今年3月、自炊代行が著作権侵害に当たると最高裁が判断した訴訟の終結後、自炊行為そのものが刑事摘発されるのは初という。
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