日本の常識は世界の非常識!? 軽いだけのノートPCが海外で売れない理由:“中の人”が明かすパソコン裏話(1/2 ページ)
メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回は、私が米国担当者に「軽量ノートPC」の提案をしたときの話をご紹介します。
こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、PCの周辺機器やPCパーツ、機構の仕組みなど、普段は脇役ともいえる部分に光を当て、それらの素晴らしさや製品を選ぶときに気を付けたいポイントを紹介してきました。
今回は、ノートPCの「軽さ」と「頑丈さ」に着目したいと思います。「軽さは正義」とまで言われるように、皆さんもモバイルノートPCを購入するときは、本体の軽さが気になる要素だと思います。
「できる限り軽いノートPCがほしい、1キロを切る超軽量ノートPCを作りたい」
私も1人の日本人として、できる限り軽いノートPCを作ってお客さまにご提供したいと考え、製品マネジャーのポジションへ着任した早々、米国のプロダクトチームに上のような製品の要求を挙げました。
日々、電車を使って移動することの多い首都圏においては、「荷物を少しでも軽くしたい!」といった声が上がる事は不自然ではありません。当時の私を振り返れば、「こんな素晴らしい要求はない。きっと相手(米国の開発チーム)も喜ぶはずだ」と自信に満ちていました。
しかし、ここで思わぬ洗礼を受けることになります。海外では軽さだけが重要な指標ではないというのです。「頑丈さ」と「質感」が重要だと。
正直、最初は相手も(日本から痛いところを突かれて)悔しいから言っているのかなと思いました。しかし、どうやら本気でそう思っているようなのです。当時の私は困惑しました。
彼らの言い分によれば、軽すぎると安物に見えるというのです。素材も軽くできるからと言って安易にプラスチックのようなものを採用するのではないし、耐久性と質感を兼ね備えるアルミ素材を採用するなど、質感の高さを維持すべきだと。
つまり、世界で評価される商品性を備えていなければOKが出せないというのです。
振り返ると、当時の私は慢心していました。耐久性や質感などは、軽量化という「大義」を前にすれば、ある程度「妥協」できるだろうと無意識に考えていました。
世界では、物事に対して日本での常識とは異なる視点・価値観があることを理解しなくてはなりません。なにより、販売ボリュームを考えれば日本でしか売れない商品では採算が取れないことは明らかでした。
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