「NAVERまとめ」と著作権 LINEに法的責任を問えるか? 弁護士が考察する:STORIA法律事務所ブログ(5/5 ページ)
「NAVERまとめ」のコンテンツは著作権侵害に当たるのか。著作権侵害が認められた場合、LINEに法的責任を追及できるのか。弁護士の杉浦健二さんが解説する。
LINE社が発表したNAVERまとめに関する見解
なお平成28年12月28日、LINE社は一連の報道を受けてプレスリリースを発表しました。(「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について)
このリリースによると、LINE社は著作権侵害による削除請求を受けた場合、これまでは権利侵害ありの判断をするまでの間は当該まとめ記事は公開となっていたが、平成28年12月8日以降に侵害申告がなされたまとめ記事についてはまず非表示とするみなし非表示対応を行うものとしました(著作権侵害の疑いが生じた時点で非公開にする)。
この方針変更は、LINE社が著作権侵害主体ではない方向に働く要素、またプロ責法上も免責を受けられる方向に傾く要素となり、LINE社に有利に働くものと思われます。
ポイントはNAVERまとめを記事作成者と同視できるかどうか
今回のプレスリリースで、LINE社は
「NAVERまとめ」は、1次コンテンツを生み出すサービスではなく、情報の検索/流通を担うサービスです。1次コンテンツがなければ、流通は成り立たず、「NAVERまとめ」は常に、1次コンテンツと閲覧する人々のよりよい架け橋となることを引き続き目指して参ります。(「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解について)
との見解を示しています。
NAVERまとめ自身がコンテンツを生み出していると判断された場合、運営者であるLINE社自身が著作権の侵害主体となり、また「発信者」にもあたるためプロ責法上も免責されないため、著作権法に基づく差止や損害賠償請求を受ける可能性が出てきます。
このような法的判断もあり、LINE社はNAVERまとめを「1次コンテンツを生み出すサービスではなく、情報の検索/流通を担うサービス」であると対外的に改めて示しておきたかったのだと思われます。
今回のNAVERまとめ管理方針変更(著作権侵害の疑いが生じた時点で非公開対応)は、NAVERまとめにおける著作権侵害コンテンツを減少させるものですし、LINE社にとっては自社の法的責任を問われにくくするものです。
ただ一方で、現時点でまとめ記事投稿の仕組み自体に変更は加えられていないと考えられるため(引用モードの投稿部分など)、なおLINE社に対する法的責任追及の余地が消えたわけではないと言えるでしょう。LINE社の対応改善とLINE社への責任追及の動き、双方に注目して今後も見解を示してまいります。
弁護士:杉浦健二
中小企業から上場企業、海外法人まで日本国内外を含めた案件を取り扱う。契約交渉や債権回収などのビジネス法務、著作権関連、インターネット関連に多く携わる。国内外で講演実績多数。STORIA法律事務所所属。ブログ更新中。
関連記事
- 「WELQ」はアウトか? セーフか? DeNAの責任は? 著作権法の観点から弁護士が分析してみた
WELQをはじめとした「まとめサイト」の問題は、倫理面や法律面が複雑に絡み合っている。WELQの「リライト」は、著作権法の観点からアウトか、セーフか。著作権に詳しい弁護士の柿沼太一さんが解説する。 - 「ネットから盗用写真を駆逐せよ」 「アサヒカメラ」2月号に「損害賠償&削除マニュアル」
「ネットから盗作写真を駆逐せよ! 損害賠償請求だって1人でできる!」――「アサヒカメラ2月号」に、ネットで写真を盗用された場合の対処法を解説する緊急企画が掲載されている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.