ペーパーレス化が進んでプリンタは不要になる!? 今や欠かせないデジタル印刷の可能性:“中の人”が明かすパソコン裏話(2/2 ページ)
メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回はプリンタとペーパーレス化について考えます。
仮にこれらを全てペーパーレス化しようとすると大変です。例えば領収書をメールで送信しようとすると、送り先のメールアドレスが正しく入力されずエラーになってしまったり、メール受信拒否設定を解除する必要があったり、またはその手順を伝えたりと、余計な手間が予想されます。
将来的に、これらの書類もスムーズにやりとりできる状況が来るかもしれませんが、現時点では紙で手渡されたほうが都合がいい場合も多いかもしれません。タブレットの活用やペーパーレス化というものは、業務の効率を上げる効果的な手段ではあるものの、ペーパーレス化自体そのものが目的となってしまわないように注意が必要でしょう。
ペーパーレスへの動きがあるとはいえ、まだ印刷の需要はあることがお分かり頂けたでしょうか。
“デジタル印刷”で実現したこと
印刷物は保存性が高い反面、一度印刷してしまうと内容の更新が難しいというデメリットがあります。例えばカタログを社内の需要よりも多く印刷してしまうと、長期間の在庫を抱えてしまい、在庫を消費するまで更新ができません。場合によっては、廃棄するコストが掛かってしまう可能性もあります。
こういった理由から、在庫を抱えずに少量ロットでも対応できる印刷サービスへのニーズが生まれ、業務用の「デジタル印刷機」が活躍するようになりました。
大型デジタル印刷機は、スーパーやコンビニエンスストアに並ぶ商品パッケージやタバコのカートンケースの印刷で活躍しています。これらは、商品の特徴を主張する重要な要素ですので欠かせません。
最近では、ちょっと変わった印刷をすることで、他にない新しいマーケティングを行うこともあります。以前、ペットボトルのラベルに名前が印刷されたものが話題となりましたが、従来の印刷機ではこれほどの種類の印刷を行うことは困難でした。
ビールのラベルに好きな写真を印刷して大切なひとに贈ることができる「パーソナライズ」サービスも、デジタル印刷によって実現したサービスの1つです。
コカ・コーラのパーソナライズキャンペーン「名前入りボトル」の例。デジタル印刷機によりこのようなプリントを可能としている(HP and Coca-Cola Brand Owner Videoから引用)。
壁紙をカスタムオーダーできるお店にもデジタル印刷技術が使われています。最近はペットの写真や家族の写真など、お気に入りの写真を大きく引き伸ばして壁紙にする方もいらっしゃるようです。とてもおしゃれですね。
注文する時には、タブレットやスマートフォンで商品を選び、サービスによってはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)で部屋の壁紙を変更したときの様子をシミュレーションすることができます。
いかがでしたでしょうか。ペーパーレスによってプリンタが不要になるかとおもいきや、新しい技術によって今までにない創造的な商品を提案したりできる可能性を秘めているのです。
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