「イノベーティブでクールじゃないと、がっかりされると思っていた」――元Apple社員が開発、IoTサービス「まごチャンネル」が生まれるまで:クラウドファンディング「成立」のその後(3/3 ページ)
Appleを退職してから何をすべきか迷っていた――IoTサービス「まごチャンネル」を開発した梶原さんに、狙いと思いを聞いた。
そしていざプロジェクトがスタートすると、さまざまなメディアに掲載されて盛り上がりを見せ、目標金額の100万円をわずか50分で達成。そのスピードがさらに話題となり、数十ものメディアで取り上げられた。期間中も話題は冷めることなく、最終的に約571万円を調達し、プロジェクトは盛況のうちに終了したという。
ユーザーの反応は
目標を大きく超える資金を調達したまごチャンネルは、無事に製品化が決定。すでに開発を終え、クラウドファンディングで支援してくれたサポーターへの製品配送も完了している。
製品を受け取ったユーザーからの反応は上々のようだ。「(まごチャンネルを)見るのが毎日の日課になっている。毎日成長を見るあまり、出不精の親がニューヨーク在住の孫に1年に2回も会いに来るようになった」など、いくつもの喜びの声が聞こえてきているという。
特に、クラウドファンディングの実施理由でもあった「熱狂的な初期ユーザー」からの声は大きく、製品配送が完了するとメッセージや熱心なレビューが続々と届いたという。「開発前から支援してくれたサポーターは、制作メンバーのような気持ちでいろいろと自分のことのようにアドバイスしてくださる人が多かった。今後もサービスを拡大していく上でとても大事な存在になっていくと思う」と梶原さんは話す。
実際、リリース前にサポーターから出たレビューを参考に、アプリの仕様に変更を加えたこともあったという。ユーザーからもらった改善案は今後も随時検討する考えだ。
同社が今後力を入れるのは、さらなるサービス拡大に向けた仕組みづくりだ。
クラウドファンディング期間中、伊勢丹新宿本店内でMakuakeが実施していたプロジェクト展示がきっかけとなり、まごチャンネルは同店舗での正式販売がスタート。このほか、三越日本橋本店、銀座三越でもすでに販売が始まっている。今後も提携先を増やすなどし、まごチャンネルをより多くの人に使ってもらえるようにしたいと梶原さんは言う。
元アップルという経歴から「イノベーティブでなければダメだということにとらわれ、苦しい時期もあった」と話す梶原さん。今では、まごチャンネルを使って孫の様子をテレビを見られるのがうれしくて、涙を流すおじいさんやおばあさんもいるという。その光景を見れば、きっと多くの人がイノベーティブだと感じるだろう。
Makuakeとは?
2013年8月にオープンしたクラウドファンディングプラットフォーム。2016年5月時点までに1200件以上のプロジェクトが実施され、1つのプロジェクトで1000万円を超える大型資金調達に成功するケースも複数登場している。
関連記事
- 「都会のマンションの閉塞感がいやだった」 任天堂出身エンジニアが“4K映像デジタル窓”に込めた思い
無味乾燥な部屋の壁が「大自然」に早変わり――そんな4K映像デジタル窓を任天堂出身の技術者が中心となって開発した。彼らはなぜ任天堂を飛び出し、デジタル窓に情熱をささげることにしたのか。開発元CEOに聞いた。 - 「眠っていたアイデア」を形に――ソニーの社内ベンチャー発、電子ペーパー時計「FES Watch」ができるまで
クラウドファンディングサイトで注目を集めたプロジェクトの“資金調達のその後”を追いかける本連載。第3回は、ソニーが社名を出さず開発したことでも話題になった電子ペーパー時計「FES Watch」誕生の舞台裏。 - 腕時計から「リストファッション」へ 1万円台の国産カスタム腕時計「Knot」の狙い
クラウドファンディングサイトで注目を集めたプロジェクトの“資金調達のその後”を追いかける本連載。第2回は、日本製ながら1万円台の低価格を実現したカスタムオーダー腕時計「Knot」の開発プロジェクトに迫る。 - 「照明業界のApple」に――名古屋発“ダサくないLED電球”「Siphon」が目指すもの
クラウドファンディングサイトで注目を集めたプロジェクトの“資金調達のその後”を追いかける新連載。第1回は、従来のLEDライトの常識をくつがえす“ダサくないLED”の開発プロジェクトについて。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.