「プログラミング学習ソフトはたくさんあるが、学校教育では使えない」――教育現場の“見えない叫び”に元教員が教材開発 学習指導案も公開
「授業で使う」ためのさまざまな工夫がされている。
学校という場所は特殊な環境だ。1コマ45分、毎年決められた時間数の授業をこなし、学習指導要領に沿って指導目標を達成しなければならない。ネットワーク環境はまちまち。古いPCを使っている学校もあれば、iPadを導入している学校もある。――そんな環境に耐え得る、「授業で使う」ことを目的として作られたプログラミング教育サービスが開発された。「プログル」だ。
プログルは、「Hour of Code」などで知られる「みんなのコード」が開発・運営するWebサービス。そのリリースイベントが、教員や教育委員会などを対象に5月13日に行われた。開催日も平日昼間ではなく土曜日。サービスローンチイベントが報道向けでなく教育関係者向けという点に惹かれ、行ってきた。
2016年12月、文部科学省から次期学習指導要領の答申が出た。それ以来「2020年から小学校でプログラミング教育が必須となる」という言葉のみがひとり歩きしがちだが、これは「プログラムについて学ぶ」「C言語を学ぶ」といったように、プログラミングのみを取り立てて学べというものではない。誤解をしている人も少なくないのだが、ここで言われているのは「プログラミング的思考」の育成だ。
プログラミング単体として学ぶというよりは、既存の教科などを通じて「プログラミング的思考」を育もうというのが本来の趣旨である。実際、「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」を読むと、各教科の内容などと関連付けた指導が求められていることが分かる。
ここに目を付けたのがプログルだ。
プログルは、算数など既存の教科内で使うことを想定したWebアプリケーション教材。2016年10月に公開されたが、一度全てのソースコードを捨て、もう一度いちから作り直したものが2017年4月に再リリースされた。
特徴は、ステージクリア型ステップアップ教材であること、既存の教科内で実施できる教材であること、そして学校のICT環境を考慮した設計であること。開発者の田中高明さんはもともと社会科の教員だったこともあり、教育現場での課題を非常に意識した作りとなっている。
Webアプリケーションにしたのも、学校環境を考えてのこと。OSや端末に依存せず、インストール不要で、無料で使える。また、構内のフィルタリングに引っかからないよう、国内サーバで配信。実は、プログラミング入門用ゲームのHour of Codeは海外のサーバを使っており、学校で使おうとした際にフィルタリングに引っかかってしまったという経験から生かされているという。
授業の準備や雑務で日々追われる教員のために、学習指導案も公開されているから驚きだ。プログルは「全ての学校、全ての先生が実践できる教材」を目指しており、45分という限られた時間の中で目標が達成できるように考え、作られている。
例えば、教育用ビジュアルプログラミングツールとして有名な「Scratch」(スクラッチ)に比べブロックの数が少なく変数を使わないようになっているのだが、これも「学校の授業で使う」ことを目的としているから。多数のブロックによって気が散ることや、変数を理解させるのに時間がかかってしまうことを懸念し、あえて限定しているのだという。
今後はオフラインでも使えるよう、zipファイルなどの形式での配布も予定しているとのこと。田中さんは「授業で使ったらぜひ感想を教えてください。プログルは学校の先生と一緒に育てていく教材にしたいと考えています」と話している。
(太田智美)
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