最新PCやスマートフォンがバッテリーを取り外せない理由:“中の人”が明かすパソコン裏話(1/2 ページ)
メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回は「バッテリー」の秘密に迫ります。あなたは「シリンダーバッテリー」を覚えていますか?
こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、PCの周辺機器やPCパーツ、サポートの秘密、そして次世代のPCなどを広く紹介してきました。今回は、モバイル機器の要ともいえる「バッテリー」の秘密に迫ります。
スマートフォンやタブレットにとってバッテリーはとても大切なもの。いくらスペックが高くて多機能でも、バッテリー切れではFacebookに近況を投稿したり、LINEで友人に連絡したり、Instagramに今日のランチをアップロードすることもできません。つながっていて当たり前のネット社会でそんな状況に陥ると、“辺境の地”にポツンと置いてけぼり──そんな気分になってしまいそうです。
忙しい現代人にとって、充電を毎日確実にこなすのはなかなか難しいもの。寝る前に充電を忘れて次の日を迎えてしまい、外出先で残りのバッテリー残量をみながらヒヤヒヤすることもあるでしょう。
そんな時は、もはや市民権を得た「モバイルバッテリー」があると一安心です。外出先でもデバイスの充電ができるので、かばんに常備している人も多いのではないでしょうか。
一昔前と比べ、乾電池ではなく充電式のデバイスが増えた今は、より大容量なモバイルバッテリーを求める人も増えてきたのではないでしょうか。
私の周りにいるガジェット好き仲間で話題になったのが、荷物を入れるバックパックに大きなバッテリーが搭載されたもの。残念ながら国内では商品化されていませんが、スマートフォンやタブレット、ノートPCをひとまとめで充電できるので「欲しい!」という声が多かったのを覚えています。
では、モバイルバッテリーが普及する前はどうだったでしょうか。以前の携帯電話は、背面のカバーを外してバッテリーパックを交換できるようになっていました。しかも、一部では標準サイズのバッテリーと、より大容量のLバッテリーも用意されていました。
今ほど本体の待ち受け時間が長くなかったため、Lバッテリーを選択することで長時間の利用に対応していました。しかし、ほとんどの機種は標準バッテリーでスマートな形状になるように作られており、Lバッテリーを装着すると後ろがポッコリ膨れたような見た目になることが多く、「あ、あの人はLバッテリー使っている」と、外見で丸分かりだったのです。
ノートPCでも、数年前までは標準バッテリーとLバッテリーを提供する機種も珍しありませんでした本体購入時に予備としてバッテリーを購入した方もいらっしゃったと思います。
つい最近まで、ノートPC向けのバッテリーは大きく、重く、かさばるものでした。
当時、広く使われていたバッテリーは「シリンダーバッテリー」という乾電池のような形をした円筒形のバッテリーセルを組み合わせたタイプでした。直径が約18ミリあるため、バッテリーパックに入れると20ミリほどの厚さになってしまいます。内部で連結する関係上、細長いか四角いかの選択となり、デザイン上の制約も多いパーツでした。
ノートPCの中には、逆転の発想としてバッテリーをチルト角を付ける台座として利用する機種もありました。単なる邪魔なパーツから有用なパーツに仕立てたのです。
シリンダーバッテリーはある程度の厚さが生じてしまう欠点もありましたが、大容量で比較的安価であることから、実は数年前までこのタイプのバッテリーが広く利用されていたのです。
しかし、最近のモバイルPCは薄型・軽量のデザインが好まれるようになり、薄型の本体を設計するには弊害にとなってきました。最新のノートPCには、どのような形のバッテリーが利用されているのでしょうか。
薄型ノートPCに適したバッテリーとは
現在のノートPCでは、タブレットやスマートフォンで先行して利用されていた「リチウムポリマー電池」という“スライスチーズ”のような薄型バッテリーを利用しています。
このバッテリーは薄型で軽量のため、デザインを重視する薄型・軽量のノートPCで広く採用されています。しかもバッテリーの性能も高いため、駆動時間の延長にもつながります。
最近の製品がバッテリーを「外せない」理由とは
このようなリチウムポリマーバッテリーは、多くが取り外しできない構造になっています。主な理由は2つあります。1つはデザイン上の理由です。
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