メガネをかけなくても立体映像に見える「多視点ロボットカメラ撮影」技術、NHK技研が公開:NHK技研公開2017
NHK放送技術研究所の一般公開イベントに行ってきた。数ある展示の中から気になった展示を紹介する。
NHK放送技術研究所は5月25〜28日、放送に関する最新技術を一般公開するイベント「NHK技研公開2017」(入場無料)を開催した。いくつかの新技術が公開されたが、筆者が注目したのは「多視点ロボットカメラによるインテグラル立体撮影技術」。メガネをかけなくても見ることができる立体映像の撮影技術だ。「立体に見える撮影方法」は従来も存在したが、新技術ではさらに高品質な映像を撮影できる。
これまでの一般的な立体撮影では、カメラを水平方向に一列に配置していたため、垂直方向の視差が得られず、不完全な立体像に見えることがあったという。また、カメラの画角が固定されており、全てのカメラを同時制御して被写体の動きを追えなかったため、映像品質の低下があった。
そこで新たに活用するのが「多視点ロボットカメラ」。これは、カメラマンが1台のカメラを操作すると、他の複数台のカメラが被写体の方を向く自動制御システムだ。
新技術では、多視点ロボットカメラを正六角形状に6台、中心部分に1台配置。中心の1台のカメラだけを操作することで、その他のカメラも自動で被写体を追従しながら撮影する。7台のカメラの映像から、実際には撮影していない角度からの映像も計算処理で生成し、高品質な3次元形状モデルを生成できたという。
メガネかけなくても立体に見えるのは、特殊な映像表示装置(インテグラル立体テレビ)を用いているため。多視点ロボットカメラによって生成された3次元形状モデルを要素ごとの画像に変換し、「レンズアレイ」と呼ばれる非常に小さなレンズ群を通して見ることで実現している。
特殊なメガネをかけなくとも立体に見える技術はこれまでにも多く研究されているが、日常的に立体映像を目にするにはまだ研究が必要なようだ。来年のNHK技研公開ではどのような技術の進化が見られるのか。
(太田智美)
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