最近のクルマ、顔つきが“反抗期”っぽいのはなぜ? カーデザインのプロに理由を聞いた:新連載・クルマの未来はIoT(1/3 ページ)
乗り物とIoTの関係性をITmedia NEWSの車好き記者・ヤマグチが追う新連載がスタート。第1回目はSNSで話題になった“カーデザインの反抗期”について専門家に聞いてみた。カーデザインは「女性の化粧」と関係があるらしい。それってどういうこと?
IoT、人工知能(AI)──盛り上がる先端テクノロジーを語る上で、「自動車」は欠かせないものとなった。人々が夢見た「自動運転」が現実のものになりつつあるからだ。今年5月には、トヨタ自動車が開発中の自動運転車に、半導体メーカー・米NVIDIAのAIプラットフォームを採用すると発表して話題を呼んだ。
NVIDIA(エヌヴィディア)は、少しでもPCをかじったことがある人なら知らぬ者はいないであろう有名企業。一部では“謎のAI半導体メーカー”と、あえて報じられたが、これまでなじみがなかった業種同士の協働を象徴する出来事だったからこそと感じる。
この連載では、新たな局面を迎えつつある乗り物の未来やトレンドを、親しみやすい身近な話題かつ、IT寄りの視点で紹介していく。
今回ピックアップするのは、カーデザインの話。どうやら車の見た目は技術の進歩とともに「女性の化粧」と関係があるらしい。一体どういうことだろうか。
最近の車は“反抗期”を迎えている?
以前、SNS上で「最近の車は反抗期を迎えている気がする」というユニークな話題に注目が集まった。トヨタの小型車「ヴィッツ」の顔つきが、モデルチェンジを重ねるごとに勇ましくなっていくというのだ。
これはヴィッツだけではなく、他の車種やメーカーでも同じような風潮があるとの声もある。昔の車は“丸くて優しい”デザインが多かった気もするが、最新モデルは顔つきが鋭い印象なのはなぜだろうか。
カーデザインの専門家に意見を聞くため、東京・新宿にある学校法人・専門学校HAL東京を訪れた。同校はCMでおなじみ、ゲーム、CG映像、グラフィック、アニメ、イラスト、ミュージック、カーデザイン、ロボット、IT、Webの分野を学べる専門学校で、特徴的な「総合校舎コクーンタワー」のあるHAL東京をはじめ、HAL大阪、HAL名古屋、フランス・パリにも学校を展開している。
今回はカーデザイン学科の坂口善英教官と内藤則明教官にお話を伺った。主に日産自動車で活躍されていた2人の経歴は以下の通り。こんな人たちに教えてもらえる学生さんがうらやましい。
坂口善英(さかぐち よしひで)
エクステリアデザイナーとしてスカイラインR30等、国内外で数々のプロジェクトに参画。
日本自動車殿堂(JAHFA)カーデザインオブザイヤー選考委員。趣味は陶磁器の製作。
現在は、IT・デジタルコンテンツの専門学校 HAL東京のカーデザイン学科の教官として教鞭(きょうべん)をとる。
著書に『日産ラシーンのデザイン開発』(2011年 三樹書房)
内藤則明(ないとう のりあき)
日産自動車株式会社サテライトスタジオ クリエイティブボックスに1987年に入社。
チーフデザイナー。コンセプトカーを中心としたデザイン開発に参画。
2002年デザインオフィス、スパイスデザイン設立。代表。
国内外の自動車メーカープロジェクトに参画。2011年よりHAL東京のカーデザイン学科教官。
「カーデザインは女性の化粧に影響を受けている」
──最近、SNS上で車の顔つきに関する話題が注目されました。モデルチェンジをする度に勇ましくなっていく顔つき……どのような流行の変化があるのでしょうか
坂口 クルマというのはある意味、人の顔に近いのです。ヘッドランプがあってバンパーがあって、グリルがあって──私が現場にいたときは女性の化粧のトレンドに注目していました。
──女性の化粧ですか?
坂口 先ほどヴィッツの話が出てきましたが、時代の移り変わりとともに女性の化粧も同じように変化しています。あくまでこれは私の持論ですが(笑)。
カーデザインをするときに、時代の流れに身を置くことが大事です。デザイナーの中には、バンドで音楽をやっている人もいれば映画をよく見る人もいる。時代の流れをつかむ1つの方法として、女性の化粧を参考にすることもあります。
──化粧の流行はどのように変化していったのでしょうか
坂口 変化はテレビCMで分かります。化粧品メーカーや広告代理店が戦略的にやりますよね。例えばお笑いタレントのブルゾンちえみさんは全て化粧で書いた“作られた顔”です。女性の化粧でも、“目がつり上がった”ようなものが流行った時期があり、その後にクルマのヘッドランプも鋭くつり上がった感じになっていったのではと僕は思っています。
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