萌えキャラが接客“AI店員”、ヴィレッジヴァンガードが導入へ
人工知能(AI)を搭載する萌えキャラが店頭のディスプレイに現れ、来店者の質問に答えたり、雑談をしたりする――そんな取り組みを、ヴィレッジヴァンガードが導入しようとしている。その背景には「小売りの厳しさ」があるという。
「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガードが、人工知能(AI)を備えた“萌えキャラ店員”を採用しようとしている。店頭のディスプレイやショーウインドーに出現し、来店者の質問に答えたり、雑談したりできるようにする。
7月中旬に、渋谷本店(東京都渋谷区)入り口のディスプレイに、おすすめの本などを紹介する「渋谷めぐる」が登場。当初は対話機能は備えないが、ゆくゆくは自然言語処理機能を搭載し、来店客が話し掛ける言葉を理解して返事したり、探している本のコーナーを教えたりできるようにする。
将来は、客が過去に購入した商品データ、そのときに店内カメラが撮影した顔画像などを記録したデータベースと連携。そのユーザーが再び来店してディスプレイの近くを通ると、渋谷めぐるが顔を覚えていて「お久しぶりです! 先日買った本の2巻が出ましたよ」と話し掛ける――といったシーンも想定している。
開発には、人工知能関連のサービスを手掛けるモノゴコロ(東京都渋谷区)が協力。同社は「AI・人工知能 EXPO」(東京ビッグサイト、6月28〜30日)で、モニターに映る2人のキャラクターとおしゃべりできるデモンストレーションを展示している。ヴィレッジヴァンガードのAI店員にも、この自然言語処理アルゴリズムが使われる見込みだ。
デモは、2人組の女性警官が来場者を職務質問する設定。例えば「昨日の12時ごろ、あなたはどこにいましたか」(警官)→「会社で仕事をしていました」(来場者)→「それってどこにあるんですか」(警官)→「有楽町です」(来場者)→「それだと十分犯行は可能ですね」(警官)というように、話し言葉の意味を理解して会話が進んでいく。
モノゴコロはこの技術を、昨年の展示会でも出展。この1年間で80社以上と商談を進め、複数の上場企業が同社のAI技術を導入するなど、「反響で大変だった」(同社)ほど市場が盛り上がっているという。
ヴィレッジヴァンガード店舗への導入では、渋谷めぐるが「暇になると後ろを向いてボーッとしたり、来場客にいじめられると『変なお客さんが来た!』と店長を呼んだりするといったアクションを盛り込みたい」(モノゴコロ)としている。
「小売りは厳しい」 AIは「未来を感じる」
「小売りは厳しい。未来がない」――ヴィレッジヴァンガードの姫野文信さん(商品本部新規事業部部長)はそう話す。
これまで同社は「世の中で特に売れているもの、食に関心が集まっていれば、食品の品ぞろえを強化する」といった戦略だったが、「そうした物を売るだけの時代は終わり。新しいビジネスの形を考えないといけない」という。渋谷めぐるには「ものすごく未来を感じられる」と姫野部長は話している。
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