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「AIにノーベル賞を取らせる」──ソニーコンピュータサイエンス研究所所長が語る「AIと生物学の未来」(3/3 ページ)

「ノーベル委員会を相手にチューリングテストを挑む」というソニーCSL所長の北野CEO。「ノーベル賞を取れるAI」の未来像と、AIが打破すべき科学の課題を語った。

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AIが本当のブレークスルーを生み出す時

 ただ、今後に向けて課題もある。「データ分析だけではAIがノーベル賞を取れるとはいえず、科学的な仮説をAI自身で立てられるようにならなければならない」と北野さん。AIがどのように仮説を立てるようになるのか、米DeepMindの囲碁AI「AlphaGo」を例に説明する。

 「人間がこれまで角を攻める碁を打ってきたのに対し、AlphaGoは今まで人間が考えもしなかったような『中心を攻める碁』を打ってきた。AlphaGo同士の対戦に至っては、人間の理解が及ばないものだった。これまで人類が打ってきた、あるいは打つ可能性がある囲碁のプレイは囲碁のごく一部であり、AlphaGoは人類がこれまで知らなかった多くの手を探索したということだ」(北野さん)


私達が知っている自然法則は全体のごく一部にすぎず、AIが新たな地平を開拓してくれるかもしれない

 「AlphaGoの手法をそのまま使えるわけではないが、新たな自然法則発見のためのAI技術も目指すところは同じだ。AIを使うことで、私たちが見つけられない、あるいは理解できない自然法則を見つけ出すことができるかもしれない」。これからのAIがAlphaGoのように、人間の発想の及ばない自然法則の探索をすることになるだろう――と北野さんは予測する。

 「これまで文明の進歩は“道具の進歩”だった。石器を作り、動力を得て、情報通信技術で革命が来た。AI技術で多くの人はスマートマシン(AIを搭載した機械)を作ろうとしているが、本当にブレークスルーを生み出すのは知識を生み出す道具(としてのAI)だ。AIという道具で人間の認知の限界を超えた研究が進み、私たちの文明をさらに加速させ、変化させていくだろう。それを目指すのが、ノーベルチューリングチャレンジだ」(北野さん)


文明の進歩は道具の進歩。AIが新たな“道具”になるか
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