民間主導で災害支援、ヤフーなど17社連携 狙いは
ヤフーなど民間企業17社、NPO6団体が、災害発生時の物資・サービス支援で連携。被災地の情報を集約し、物資を一括して届けることで、支援の漏れや無駄を減らす狙い。
ヤフーなど民間企業17社、NPO6団体は8月31日、大規模災害の発生時、物資やサービスを共同で被災地に届けるアライアンス「SEMA」(シーマ)を設立した。被災地が必要としている物資などの情報を1カ所に集約し、各企業が提供する物資を一括して届けることで、支援の漏れや無駄を減らす狙い。
災害発生時、現地入りしたNPOが情報を収集し、ヤフー本社内に設置した対策本部に送る。災害本部では、どの被災地がどんな支援を必要としているか情報を統合し、各企業から支援を募って提供する。例えば、キリンは飲料水、アスクルはトイレットペーパーなど日用品、ソフトバンクはタブレット端末やモバイルWi-Fiルーターを提供し、西濃運輸やハート引越センターなどが物流をサポートする。
組織化せず、アライアンスという形式にしたのは、加盟企業の自主的な災害支援をベースにしているためという。加盟企業が被災する可能性も考慮し、災害時の支援に参加するかは各企業の判断に任せる。
ヤフーの川邊健太郎副社長は「個々の企業が個別の判断で行ってきた災害支援をネットワーク化するだけで十分に効果がある。組織化すると意思決定など、仕組みが煩雑になるので、迅速性を優先した」と話す。
避難所での配布などは、アライアンスの参加を問わず、現地にいるNPOなどに協力してもらう。支援期間は、被災者が仮設住宅への移動を完了するまでを想定する。
民間企業が支援する意味――「公的支援からこぼれ落ちるものをサポート」
災害大国の日本には、政府や自治体などによる公的支援の仕組みも多数ある。なぜ民間主導でこうした支援を行うのか。川邊副社長は「政府とバッティングするのではなく、その上を行くような災害支援を行う」と話す。
川邊副社長は、大規模災害について「日本独自の課題やリスクが生じている」と指摘する。「高齢化が進んだ地域では、避難したくても自力では避難できない人がいる。ペットや嗜好品、心のケアなど、生活水準が高い日本ゆえの課題も出てきている」という。
「公的支援の動きを阻害せず、そこからこぼれ落ちてしまうようなもの――ペットが一緒にいて避難所に入れない人や、公的支援では対処できない病気や障害を抱えている人などをサポートする」(川邊副社長)
東日本大震災や熊本地震などでは、報道される機会が多い地域に支援が集中する――という“格差問題”が生じたという指摘もある。川邊副社長は、現地から情報を収集・統合し連携することで、こうした課題を解消できると見込む。
加盟NPOのアジアパシフィックアライアンス・ジャパン 大西健丞代表理事は「政府認定の避難所かどうかにかかわらず、独自の視点で支援を行う」としている。
今後も加盟企業、団体を募集し、支援の輪を広げていく考え。加盟企業との競合関係は問わず、協力を呼び掛ける。現時点では、支援体制が不十分な医療・製薬関連の企業にも参加を要請する考えだ。
大西理事は「明日、大規模災害が起きても対応する覚悟がある」「多くの方々を早く被災地の苦しみから少しでもマシな状況へと救える仕組みを作りたい」と意気込んでいる。
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