驚異の12分間回転――「ハンドスピナー」開発にアツくなる企業の正体(4/4 ページ)
回転時間は12分間以上、価格は1万7280円(税込)――そんな型破りなハンドスピナーを製造したのは、大手玩具メーカー……ではない。製造業向けの「ベアリング」を手掛ける企業が、ハンドスピナーの開発にアツくなるまでの経緯を聞いた。
「頭のどこかに残ってほしい」
「当社は、B2C(Business to Consumer)の事例はほとんどない。その怖さはあった」――石井社長はそう話す。NSKマイクロプレシジョンがベアリングを提供しているのは、主にメーカー企業。「SNSが普及している時代、いい声も悪い声もすぐに拡散する。一人一人の消費者がお客さまだと考えると(普段とは違う)緊張感はあった」
だが、その心配は杞憂に終わった。販売を委託している「スピンギア」(ヨーヨーの長谷川さんのWebサイト)では、発売から約1分で完売。YouTuberのSEIKINさんも動画で取り上げ、再生数は300万回を突破している(8月28日時点)。
「ベアリングメーカーの本気を感じた」――ネットではそんな声もあり、石井社長は感謝しているという。これまでに約200個を売り上げ、品薄状態の同製品だが、「手作りということもあり大量生産ができず、人件費を考えると採算は取れない」と石井社長。売り上げよりはむしろ、ベアリングを広く知ってもらう機会になればと話す。
石井社長は「ベアリングは外からは見えない回転部分に使われている“縁の下の力持ち”なので、注目されることは多くはない」とも。自動車には約150個使われているなど、身近な存在にもかかわらず「触れる機会は少ない」。ハンドスピナーをきっかけに「どんなメーカーがベアリングを製造しているか」と認知度が向上し、ゆくゆくはシェアの拡大、人材確保につながることを期待している。
「YouTubeを見ている子どもたちは十中八九、ベアリングのことを知らなかったと思う。頭のどこかに残ってほしい」(石井社長)
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