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非常灯などの「蓄光材料」、レアメタル使わず製造 九大が世界初
九州大学が、世界初の有機材料を使った蓄光システムを開発。レアメタルを使わずコストを抑え、比較的簡単なプロセスで製造できるという。
九州大学は10月3日、高価なレアメタルを一切含まず、有機材料を使った蓄光システムを世界で初めて開発したと発表した。比較的簡単なプロセスで製造でき、「蓄光材料の普及に広く貢献する」という。
蓄光材料は太陽光や照明の光を蓄え、数時間にわたり発光するため、時計の文字盤や非常誘導灯などに利用されている。従来は、ユーロピウムなどのレアメタルを含む無機材料で作られたり、合成に1000度以上の高温処理が必要だったりと、コスト面で課題があった。
研究チームは、単純な構造の2種類の有機分子「電子ドナー材料」と「電子アクセプター材料」を1対99の割合で混ぜると、蓄光材料に使えることを発見した。この混合物では、光を吸収すると電子ドナー材料から電子アクセプター材料に電子の受け渡しが生じる。そして、徐々に電子アクセプター材料から電子ドナー材料へと電子が戻るときに光が生じつつ、再び発光可能な状態になるという。
2種類の有機分子は簡便に合成でき、混合するだけでよく、複雑なプロセスは不要という。溶媒に溶かしたり、透明度が高かったりと、従来の蓄光材料では難しい使い方もでき「蓄光材料の新しい用途を開拓することが期待できる」(研究チーム)としている。
研究成果は科学誌「Nature」(電子版)に10月3日付(日本時間)で掲載された。
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