異なるブロックチェーン同士を安全に接続 富士通研が新技術
ブロックチェーン同士を安全につなぐセキュリティ技術を富士通研究所が開発。異なるブロックチェーン同士を新たなブロックチェーン「コネクションチェーン」でつなぐ技術だ。
富士通研究所は11月15日、ブロックチェーン同士を安全につなぐセキュリティ技術を開発したと発表した。異なるブロックチェーン同士を新たなブロックチェーン「コネクションチェーン」でつなぐ技術で、すべての処理がコネクションチェーンに記録されるため、取引の透明性を確保できる。仮想通貨の交換や決済などに活用できるとしている。
仮想通貨などで取引や契約を自動化するスマートコントラクトはこれまで、1つのブロックチェーンに閉じた範囲でしか動作しなかった。複数のブロックチェーンを横断した取引を実現するには、ブロックチェーンの境界で通貨の交換処理を行うアプリケーションが必要で、その部分の透明性確保が課題だった。
今回、複数のブロックチェーン間を新たなブロックチェーン「コネクションチェーン」で接続し、各チェーンでの通貨交換に関わる取引処理をひも付けることで、全体を一つの取引として自動実行できるスマートコントラクトの拡張技術を開発。各チェーンでの取引処理の実行タイミングを同期させるトランザクション制御技術も開発した。ブロックチェーンを横断する場合にも、すべての取引処理がコネクションチェーンに証跡として記録されるため、取引の透明性を確保できるとしている。
また、資産の「保留」状態を実現する「資産預託」の概念を新たに設計。資産移転元では資産を一旦「保留」状態にし、移転先の通貨移動を確認してから、資産移転元の取引状態を確定させるなど、各チェーンでの取引処理のタイミングを制御できる。これにより、従来のブロックチェーンでは困難だった取引処理の“待ち”状態を発生させ、全体の成否に応じた取引処理の確定・取消を実現できるようにした。
同技術を使い、2つの異なるアーキテクチャのブロックチェーンを相互接続し、仮想通貨の交換による資産移転実験を行ったところ、各ブロックチェーンの取引IDや移転資産の数量、結果などが一つの取引としてコネクションチェーンに記録されることを確認した。さらに、支払や決済ができないなどの理由でチェーンを横断する取引が途中で失敗する場合は、保留状態の資産を元に戻す取引処理のIDやタイムスタンプが記録されることも確認した。
同技術により、例えば、小規模ネットショップで新たな地域通貨に対応したり、特定の仮想通貨を保有しているユーザーを対象とした優遇交換のキャンペーンなど変換レートを自由に定義するといったことが可能に。企業間の高信頼なデータ交換や契約自動化などへ発展させながらさまざまな分野での検証を進め、2018年度以降の実用化を目指す。
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