「猛烈に売れる人は、日本に100人もいない」 ライブコマースの課題は“育成不足”?
メルカリ、Candee、BASEが共通して抱える、ライブコマース市場の課題は――「TechCrunch Tokyo 2017」で3社の登壇者が語った。
「ライブコマースで猛烈に売れる人は、日本国内に100人もいない」――スマートフォンアプリ「Live Shop!」を提供するCandeeの新井拓郎副社長はそう話す。個人がライブ配信しながら商品を紹介・販売するライブコマースの国内市場は、「C CHANNEL」「メルカリ」などが相次いで参入し盛り上がっているが、「誰が売るか」という課題が顕在化しているようだ。
スタートアップ向けのイベント「TechCrunch Tokyo 2017」(11月16〜17日、渋谷ヒカリエ)で、メルカリの伊豫(いよ)健夫執行役員、Candeeの新井副社長、ネットショップ開設サービス「BASE」の鶴岡裕太CEOが、胎動するライブコマース市場の現状を語った。
「売れる人と売れない人の差が広がっている」
「人によっては、数秒で100着の服が売れる」――伊豫執行役員がそう話すほど、ライブコマース市場は花盛りだ。フリマアプリ「メルカリ」では、7月に「メルカリチャンネル」を開設。当初はタレントや著名人がライブ配信していたが、8月に一般ユーザーにも開放し、11月現在では約800人が商品を販売しているという。
販売者は、コーディネートを作りながら洋服を売る人、メイクの工程を見せながらコスメを売る人、料理しながら採れたて野菜を売る農家などさまざま。しかし伊豫執行役員は、売れる人と売れない人の差が広がっていると指摘する。
伊豫執行役員が重要と話すのは「商品在庫」と「誰が売るか」だ。「日本では(在庫と販売者をつなぐ)スムーズな仕組みができていない。仕組みが整えば、かなりもうかると思っている」
「誰が売るか」は、市場全体の課題のようだ。Candeeの新井副社長は「正直、ライブコマースでは『誰が発信するか』の影響が大きく、売るアプリは『どこでもいい』という話になる」という。「(ライブコマースの場を提供する)企業のバリューがどこまであるのか分からないのが課題だ」
その上で、新井副社長は「人を育てることが市場を育てるのは間違いない」とし、「企業がその点で貢献し『売れる人』を発掘・育成していく必要がある」と強調する。
一方、BASEの鶴岡CEOは「売れる人」の共通点として「本当にその商品を好きで取り組んでいること」を挙げる。例えば、BASEで人気の販売者には、漆(うるし)について何時間でも語れるような漆職人がいるという。
「BASEでは、お金を稼ぐ才能よりも、好奇心があってモノ作りが好きな人の動画が盛り上がっている。Webサイト(の文字や静止画)では伝わらないことがライブ配信では伝わるので、お金もうけの気持ちが先行しているかどうか、発言の1つからでもバレてしまう」
メルカリの伊豫執行役員は「商品のスペックを伝えるくらいの人が多い。説明だけで魅力までも伝えるのは難しく、伸び悩みの要因」と付け加えた。
「コミュニティービジネスに近づいている」
さらに3社は、販売者と購入者の「コミュニティー」(結び付き)の重要性も強調する。
鶴岡CEOは「個人がSNSを活用してファンの母数を集めやすい時代」とする一方、既製品ではなく個人のハンドメイド商品を取り扱うBASEでは、「商品や販売者(作り手)のことを購入者に深く知ってもらえないと売れない」と話す。
伊豫執行役員も「ライブコマースによって、人と物の結び付きが変わっていく」との意見を述べた。「人とコンテンツの組み合わせで売れるものだから、ライブコマースにはファンが生まれる。販売者への共感があって購入するので、リピーターも多い」
新井副社長は「ライブコマースは今、『何億売れた』というような“最大瞬間風速”にスポットが当たっているが、実際はコミュニティービジネスに近づき、ファンとの永続的なコミュニケーションで伸びていくと思う」と分析している。
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