“食べる”ための自動運転技術 「ロボット農機」は農業を救えるか:特集・ミライのクルマ(2/2 ページ)
2020年に向けて盛り上がる自動運転技術。公道を走るクルマだけでなく、閉じられた空間(農地)を走る農業機械にも自動運転レベルがあるのをご存じだろうか。
クボタも自動運転に対応するトラクター、田植機、コンバインを1月に公開済み。6月には、人の監視下で1台の無人走行、あるいは無人機と有人機の2台で協調制御できるトラクター「アグリロボトラクタ」(SL60A)の試験販売をスタートした。18年の一般販売に向けて完成度の向上を目指す。
アグリロボトラクタは、車体にレーザースキャナーと超音波ソナーを搭載。農地に人が侵入したり、障害物に近づいたりすると自動で停止する仕組み。さらに4台のカメラで撮影した映像を、モニターやタブレットを使ってリアルタイムで監視できる。
井関農機も自動運転に対応するロボットトラクター「T. Japan」(TJV623)を発表するなど、18年中には各社で自動運転レベル2に対応するトラクターの足並みがそろう見込み。公道に比べ、閉じられた空間での稼働が前提で、急な人の飛び出しといった問題も少ない。乗用車と比べ、技術的な障壁は低いだろう。18年度に本格運用が始まる“日本版GPS”の準天頂衛星「みちびき」も、自動運転の肝となる位置情報の精度で追い風になりそうだ。
「ロボット農機」、見えてくる課題はコストか
市販化に向けて順調に見える農機の自動運転技術だが、課題はコストにありそうだ。全国農業協同組合連合会(JA全農)は9月、農機メーカー4社に対して大型トラクターの機能を絞った低価格モデルの開発を要求した。稲作の農機コストが米生産費の約2割を占めており、生産者からは農機価格の引き下げ要望が強いという。
クボタが試験販売しているアグリロボトラクタは、メーカー希望小売価格が1100万円(税別)から。同格の一般モデル(税込873万)に比べて価格は約1.5倍に近い。確実に農家の負担は増える。
一般のクルマの世界では、カーシェアのように複数人で資産を共有する「シェアリングエコノミー」という考え方も徐々に普及してきた。フル稼働する時期が重なりやすい農機では同じ考え方が通用しないことも考えられるが、抜本的な新しい施策が必要となるだろう。
20年には、その場に人がいない完全無人のロボット農機の姿も見えてくる。農業が抱える担い手不足の特効薬として、自動運転技術が農地で活躍する日は近い。
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