自動運転技術ベンチャーのZMP(東京都文京区)は12月14日、公道を使った遠隔型自動運転システムの実証実験を報道陣に公開した。車両の外から人が遠隔監視を行う方式で、2020年の完全無人タクシー商用化に向けた第一歩という。運転席に人がいない状態の自動運転車が都内の公道で実験を行うのは初。
都内の公道で自動運転技術の実証実験を企業に促すため、東京都と国が9月に共同で設置した「東京自動走行ワンストップセンター」の支援下で実施するもの。6月に警視庁が公開した新ガイドラインにより、運転席に人が乗っていなくても遠隔監視で実験を行えるようになった。
実験に使われるのは、トヨタ自動車のエスティマハイブリッドを改造した「ZMP RoboCar MiniVan」。運転席は無人で、後部座席にオペレーターが乗り込む他、設置された複数のカメラを通した映像などを遠隔地にいる人が監視する。速度は時速50キロ程度。
ZMPは、14年から愛知県の公道で運転席に人が乗った状態での実験をスタート。その後、東京都文京区やお台場といった交通量の多い場所でも車線変更や交差点右左折などを検証してきたという。今後は、遠隔型自動運転状態でも同様の検証を続けていく。
ZMPの谷口恒社長は、公道での実証実験について次のように話す。
「公道で実験を行うのは初めてで、例えばドライバーのアイコンタクトが無くなると、交通にどのような影響を及ぼすのかなど、未知の部分は多い。実際に使う人が安心して乗れないと意味がなく、しっかりと検証したい」(谷口社長)
目指すは「自動走行タクシー」実現
ZMPは、日の丸交通と自動走行タクシー実現に向けた協業を6月に発表。配車アプリ開発などで協力体制を築いているが、タクシー会社が自動運転導入を急ぐ背景は、業界の人手不足にある。会場にいた日の丸交通の富田和孝社長は次のように説明する。
「タクシー業界は高齢化しており、20年の東京五輪・パラリンピックによるインバウンドに対応できるのか、危機感を持っている。白タクやライドシェアをはねつけられるよう、1年でも早く導入したい」(富田社長)
自動走行タクシーの実現によって、ドライバーの仕事が奪われるという懸念もあるが、ZMPの谷口社長はあくまで補完関係にあると説明する。
「短距離は自動走行タクシー、収益性の高い長距離は有人タクシーなど、WinWinの関係になれるだろう。東京を走る5万台のタクシーのうち、約1万台は車庫に眠っている状態で、自動走行タクシーへの置き換え需要がある。人件費や車両稼働率の上昇を考えても、収益が見込めるだろう」(谷口社長)
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