AIで投資効率が10倍アップ? 元Google社員がドイツでベンチャーキャピタルを立ち上げた理由:“日本が知らない”海外のIT(1/2 ページ)
AIの波が「ベンチャー投資」の世界にも押し寄せてきた。ドイツ発のベンチャーキャピタルがAIを活用する理由とは。
2017年は「AI元年」と呼ばれるほど、さまざま業界で人工知能や機械学習の採用が進んだ。身の回りを見ても、スマートフォンやスマートスピーカーにはAIアシスタントが搭載され、YouTubeやNetflix、Amazonなどのサービスもレコメンデーション機能にAIを活用している。
そして、ついに「ベンチャー投資」の世界もAIを活用し始めた。ドイツ・ベルリンに拠点を置く「Fly Ventures」は投資先候補の発掘や絞り込みにAIを使うベンチャーキャピタル(VC)だ。
連載:“日本が知らない”海外のIT
日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。
シード投資の活発化で欧州の成長を後押し
Fly Venturesは、ステファン・セイボス氏(Stephan Seyboth、元Googleプロダクトマネジャー)、フレドリック・ベルゲンリッド氏(Fredrik Bergenlid、元Googleソフトウェアエンジニア)、ガブリエル・マトゥシュカ氏(Gabriel Matuschka、元VC Partech Venturesベルリンオフィス統括)の3人が、16年に設立した。
Fly Venturesの創業チームが注目したのは、欧州のスタートアップエコシステムにおけるシード投資の問題だ。
欧州では、米国と比較してシードステージ企業への投資がそこまで活発に行われておらず、マーケット全体としても、米国のベンチャー投資額はEUの5倍以上で、投資件数も3倍ほどの開きがあるといわれている。
そこで欧州のテクノロジー業界に精通した創業チームは、いかに有力な投資先候補を発見し、投資活動をスケールさせるかが、今後のスタートアップエコシステムの成長に不可欠だと考えた。
共同創業者のセイボス氏は「欧州では、シードステージ投資の需給に大きなギャップがある。そのせいで、本来はプロダクトの開発に集中すべき時期にあるスタートアップが、資金調達に時間をかけすぎている。私たちはAIを使って効率的に企業情報を収集・精査することでシード投資をスケールさせ、ゆくゆくは投資先企業が一流のVCからシリーズAで資金調達できるような環境を作り出そうとしている」とEU Startupsの取材に答えている。
さらに、「VCは常にイノベーションやディスラプション(創造的破壊)について語っているが、自分たちの仕事は例外だと考えている節がある。私たちは投資家の仕事にも自動化できる部分がたくさんあると考えている」と続ける同氏。
昨年末、同社は欧州投資基金やLINEとパートナー関係にあるフランスのKorelya Capitalを中心とするリミテッドパートナーから、合計4100万ユーロ(約55億円)を調達。投資額は1件あたり40万〜90万ドル(4500万〜1億円)程度で、すでに10社以上のスタートアップに投資を行っている。
AI利用で投資効率は「約10倍向上」
Fly Venturesが開発したAIは、ブログや求人情報、アクセラレーターの情報や「Crunchbase」をはじめとする数百ものデータソースから情報を集め、自動的に各社のランクづけやフィルタリングを行うというもの。
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