「もう自分では勝てません」 28歳の東大院生が最強の麻雀AIを作るまで:新連載・これからのAIの話をしよう(麻雀編)(3/3 ページ)
将棋や囲碁ではAIが人間のトッププロを超えたといわれている。運の要素がある麻雀にもAIの波が。麻雀AIは人間を超えられるのか。
水上さん 相手の待ち牌予測などに使えるのでやってみたいとは思いますが、ディープラーニングを使ってもまだそこまで強くならないと思います。あと、今課題になっている強さのボトルネックがそこではないと思っているので。
―― 何が課題になっているのでしょうか。
水上さん “読み”をせずに次の一手だけを一生懸命考えても、恐らく人間より強くならない。今やっているシミュレーションを改善して局面の評価値の精度を上げていく方が強くなる気がしてます。
―― そもそも、爆打を強くする上での課題はどうやって見つけるんですか。
水上さん 頑張って牌譜をたくさん見ることですね(笑)。仮説を立てて、爆打を何回も繰り返し対戦させて試行錯誤していく地道な作業です。
「相手のレベルを見積もる」のが苦手
―― 他にも今超えるべき課題はありますか。
水上さん 対戦相手に合わせて打つのが苦手かなぁと。
―― 対戦相手によって苦手なタイプがあるってことですか。
水上さん プレイヤーの相性みたいなのはないです。大体何巡目でリーチが来るなとか、平均的なプレイヤーを想定しているので。
ただ、本当はもっと搾取できていたはずなのに、相手のことを評価しすぎてしまったり。
―― 本来もっと点数を稼げていたはずなのに、相手の強さのレベルを見誤って取りっぱぐれてしまうんですね。ポーカーでもよくある光景です。
水上さん 相手もそれを利用してわざと弱いふりをして下手なプレイをしているのかもしれない(笑)。でも、そこは改善するのが難しいので取り掛かる気はないです。
―― 運の要素についてはどうですか。
水上さん 運による分散はあります。天鳳でいうと、2〜3段は変動します。1回の試合ではほとんど運ですけど、麻雀の場合は初心者と上級者なら900試合もすれば実力差は出てきますよ。
―― 爆打を作って麻雀への見方は変わりましたか。
水上さん たまに遊ぶときに、AIだったらどういう風に打つのかなと考えるようになりました。自分がテンパイしてないのに相手のリーチに切り込んでいくとか、これまでやりにくかった手でも「爆打だったらこうやるんだろうな」と自分に言い聞かせて打ってます(笑)。
あと1〜2年で人間を超える?
―― 新たに「AIの視点」が増えたと。麻雀AIはいつ人間を超えると思いますか。
水上さん 私の先生(鶴岡慶雅准教授)は5年以内と言ってましたが、恐らく1〜2年後くらいじゃないかと……。ずっとこう言い続けてるかもしれませんが(笑)。自分の頑張りと、計算資源をどれだけ調達できるかもあるので。
―― 今は天鳳で対戦できますけど、爆打とプロ雀士の対決が見たいという人も多そうです。
水上さん 将棋の「電王戦」みたいな場があればいいのですが。今爆打は1日で半荘50回くらい打ってますけど、人間は体力が持たないですよね。
リアルで爆打と打ちたいという要望もあるんですが、誰が代指しをやるかとか、ポンやチーをするときどうするかとか、例えばそれをネットで放送・配信したときにエンターテインメントとして面白くできるかとか、課題は多いです。
―― 将棋ソフトの「形勢判断」のように、AIが新しい麻雀の観戦スタイルを提供するかもしれませんね。爆打とトッププロの対決、ぜひ見てみたいです。
関連記事
- ローソンのあきこちゃん、将棋に強くなる 「Ponanza」搭載、LINEアカウント経由で対局
ローソンのLINE公式アカウント経由で、コンピュータ将棋ソフト「Ponanza」と対局できるようになった。 - 最後の「電王戦」、将棋ソフトの勝利で幕 佐藤名人は雪辱ならず
「第2期 電王戦」の第2局は、将棋ソフト「PONANZA」が勝利。 - 羽生三冠「もしも神様から一手だけ指し直す権利をもらえたら」──振り返るのは“あの対局あの一手”
「ニコニコ超会議2017」で羽生善治三冠が語った、「指し直したいあの一手」とは──。 - 将棋「電王戦」今春で終了へ 川上会長「歴史的役割は終わった」
プロ棋士と将棋ソフトの対局「電王戦」を今春で終了するとドワンゴが発表。最終戦は、佐藤天彦名人と「PONANZA」が2番勝負で争う。 - 日本最強の囲碁AI「DeepZenGo」対プロ棋士軍団、AIがわずかな差で勝利
日本最強の囲碁AI「DeepZenGo」とプロ棋士チーム3人が合議制で対局し、DeepZenGoが3目半で勝利した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.