AIが裁判の判例学んだら…… 福井弁護士が“合法パクり”に危機感
AI時代は“適法なパクり”が問題化するかもしれない――AI時代の著作権について福井建策弁護士が解説した。
「AIが著作権侵害に関する裁判の判例を学習したら、適法なパクりが問題になる可能性も」――著作権法に詳しい福井建策弁護士はこう話す。
今やAIが小説を書いたり、作曲したり、絵を描いたりと、AI自体がコンテンツを生み出す時代になっている。AIが低コストで大量の創作物を生み出すことは「知の豊富化」をもたらす一方で、「新たなパクり問題を生む可能性もある」と福井弁護士は慎重だ。
2月28日に都内で開催された「CNET Japan Live 2018」で解説された「AI・ビッグデータの知的財産権」についてまとめたい。
AIが裁判の判例学んだら……
AIが低コストで大量の創作物を生み出すようになったら、フリーライド、つまり“パクり”が多発することにもつながると福井弁護士は考える。ディー・エヌ・エーが運営していた医療サイト「WELQ」(ウェルク)では、引用のレベルを超えたコピペ記事が問題になったが、その際に話題になったのが元の文章を書き替える「リライトツール」。
これはいわば“言い換えソフト”で、Googleの自動探知をすり抜ける程度に「てにをは」を変えるソフトウェアといえる。1秒で2000字を言い換えるとうたうが、福井弁護士は「人工知能をうたうが、とてもAIといえる代物ではない。こんなもので著作権侵害は免れられないだろうというのが使ってみた感想」と辛らつだが、「しかし、その気になればもっとこのツールを洗練できる」とした。
「AIが著作権侵害に関する裁判の判例を学習したら、法律のぎりぎりを攻める適法なパクりが誕生する。ツールの作成自体はそんなに難しくなく、AIが勝手にやったと言われれば責任追及も難しい」(福井弁護士)
そんな完璧に適法パクりができるリライトツールが普及したら──福井弁護士はAI時代のキュレーションやジャーナリズムのあり方を今一度考える必要があると強調する。
AI創作物に権利が認められる?
AIがコンテンツを生み出す時代には、何が起きるのか。福井弁護士が気にしているのは、AIが作った小説や楽曲に対する著作権の扱いだ。
日本では「AI創作物には著作権はない」とされている。ただし、「人間がコンピュータを道具として使う」「人間が主体で創作する」とみなされる場合は、著作物として認められる。
国外では例外も出てきている。「SACEM(フランス最大の著作権管理団体)は、既にAIが作った楽曲の権利を開始している」と福井弁護士。しかし、AI創作物に著作権を認めると、「大量に生み出されるコンテンツ全てに権利を付与するのか」「いちいち著作権侵害を訴えられるのか」という懸念も出てくる。
福井弁護士は「AI版パテント・トロールの可能性もある」と笑う。パテント・トロールは、自らが保有する特許権を侵害している疑いのある者に特許権を行使して賠償金やライセンス料を請求すること。「AIが作ったと言わなければいい。自分が主体となって作ったと主張すれば、著作権の主張はできそうですよね。AIゴーストライターが大量に生まれる可能性もありえます」とし、AI時代の知的財産権について1人1人が考えるべき時代に来たことを示唆する。
福井弁護士は「人間はAIと聞くと、素晴らしい小説やゴッホレベルの絵を描けると思いがちだが、もっと普通のミドルレンジくらいのものがマーケットには広がっている」と話す。白黒画像に自動着色するツールや、学習させた画風に画像加工するツールなど、「二次創作で活躍する加工・ツール系も今後大きく伸びる分野」という。「20世紀はプロクリエイターの時代だった。AIは街の作曲家、身近な絵描きくらいの仕事は代替できるようになるかもしれない」(福井弁護士)
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