「IoTの父」が考える「最大の課題」とは?:坂村健氏に聞くIoTの過去・現在・未来(2/2 ページ)
TRON創始者でありIoTのコンセプトを1980年代に提唱したことで知られる坂村健氏に、「モノのインターネット」がこれからどのように進んでいくのかを聞いた。3回に分けてお届けする第2回はIoTの歴史と今後の課題について。
「APIの公開」が今後の課題
坂村氏によれば、IoTがここまで進展した最大の理由は「ワンチップに集約されるようになったこと」にある。マイクロプロセッサなど何もかもがワンチップに収まっている現在だからこそ、デジタルカメラなどの小さな筐体に組み込むことができるようになったのだ。
「コンパクトで省電力なOSこそ、今の世界が求めているものなんです」と坂村氏は説明する。
だから省エネ性能が求められる現場でTRONが採用され、小惑星探査機「はやぶさ」、産業用機器から家電製品まで幅広い分野の機器に使われることとなったのだ。
そんな世界を実現するために今後のIoTにおける大きな課題は、「APIの公開」にあると坂村氏は考えている。
「15〜20年ほど前に『情報家電』と呼ばれるコンピュータネットワークを通じた通信機能を持つ家電が流行りました。しかし、あれは同じメーカーの製品でしか連携できず、囲い込みをしてしまったのがいけないと思っています。スマホが普及してからも、スマホでコントロールできるとはいえ、A社の製品はA社のアプリでしか操作できない。これは全然オープンではないんです」
とくにこの動きは日本のメーカーで顕著だ。よりオープンな仕組みを作るには、「APIの公開」が欠かせないと坂村氏は話す。
「単純にTRONを使ってもらうだけでは意味がなく、各メーカーがAPIを公開しないといけないんです。リコーはこの考えに賛同して、360度全天球カメラ『THETA』のAPIを全世界に公開したことで、さまざまなアプリが開発されています」
TRONが目指すオープンな世界は、OSを採用する側の意識が変わることが大きな課題だといえる。その課題をクリアしてこそ、あらゆるものがインターネットのようにつながる社会が実現するのだろう。
次回はIoTスマートビルを具現化した東洋大学INIAD情報連携学部の「最先端のIoT」コンセプトを坂村学部長に聞く。
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