海賊版サイトブロッキング「心強いが、諸刃の剣」 漫画家・ちばてつや氏
政府が緊急対策としてまとめた海賊版サイトのブロッキングについて、漫画家のちばてつや氏は、「とても心強さを感じた」とともに、表現の自由の制約につながる「諸刃の剣」になりかねないとの心境を明かした。
漫画やアニメを無断で掲載する海賊版サイトついて、政府が4月13日、ISPによる自主的なブロッキングを促すなどの緊急対策を決めたことを受け、人気漫画『あしたのジョー』などで知られる漫画家のちばてつや氏が公式サイトで、「とても心強さを感じた」とともに、表現の自由の制約につながる「諸刃の剣になりかねない」と心配しているとの心境を明かした。
また、ストーリー漫画家などの交流団体・マンガジャパン(代表理事:里中満智子さん)もWebサイトで、ブロッキング歓迎の意思と、表現の自由に対する危ぐを表明している。
ちば氏は14日、公式サイトを更新。政府によるブロッキングの判断について「『マンガの危機』に真剣に向き合ってくれていることに、とても心強さを感じた」とした上で、「表現者として常に大切にしてきた『表現の自由』や『知る権利』において、今回の『ブロッキング』という手段が諸刃の剣になりかねない、と危惧してもいる」と心境を明かした。
海賊版サイトの影響で「才能のある若い漫画家の皆さんが今、本当に苦しめられている」とし、「その酷い現実を見るほどに、守るべき自由の理念と、綺麗事では済まないかもしれない醜い現実のはざまで、身を引き裂かれるような思いを味わっている」としている。
ちば氏は日本漫画家協会理事長。同協会は2月、海賊版サイトを批難する声明を発表しているが、ブロッキングについては14日現在、声明などは出していない。
また、マンガジャパン(代表理事:里中満智子さん)は13日、Webサイトで声明を発表。違法サイトのブロッキングについて「『生み出す側』としてはとても心強い支えだと受け止めたが、同時に、そのような形でブロックすることが『表現の自由』を損なう方向につながるのではないかという不安も感じている」と危ぐ。
その上で、違法サイトを存続させない有効な手段は、アクセスしないことだと指摘。違法サイトの利用を避けてもらうことで、「著作者や出版元の努力を応援するという気持ちで『生み出す力』を支えていただければ」と呼び掛けている。
関連記事
- 出版業界、政府の海賊版サイト対策を歓迎 講談社など緊急声明「ISPの協力が不可欠」
政府が漫画の海賊版サイトへの対策を決定したことを受け、講談社や集英社が緊急声明を出した。「ISPの協力が不可欠」「大きな前進」と、政府の対策を歓迎する姿勢を示している。 - 政府、海賊版サイト遮断促す 「漫画村」「Anitube」「MioMio」名指し 法整備までの「緊急対策」
海賊版サイトのブロッキングについて、政府は法整備を進めることを決めた。立法までの間の「緊急対策」として、「漫画村」「Anitube」など「悪質」と認めた3サイトに限り、民間によるブロッキングが「適当」と位置づけ、ISPなどによる自主的な遮断を促す。 - 「海賊版サイトブロッキング」反対声明続々 ISPや婦人団体、与党議員も……橋本岳氏「国会軽視だ」
漫画の海賊版を掲載するサイトのブロッキングを政府がISPに要請する伝えられている問題について、反対声明が相次いでいる。12日には、JAIPAや婦人団体、自民党の橋本岳議員なども、反対する声明を発表した。 - 「海賊版サイトのブロッキングは憲法違反」「漫画村は国内から配信されている」 楠正憲さんに聞く
政府が海賊版サイトのブロッキングをISPに要請するとされる問題。ネット規制問題に長く関わってきた楠正憲さんは「海賊版サイトのブロッキングは憲法違反」だと指摘する。また、「漫画村は国内から配信されている」という。 - 政府による海賊版サイトのブロッキング要請は「法的に大きな問題」 情報法制研究所が反対声明
政府による海賊版サイトのブロッキング要請について、情報法制研究所が反対声明を出した。「通信の秘密や通信の自由を侵害し、検閲にも該当しうる重大な措置で、法的に大きな問題がある」と強く批判している。 - 海賊版サイトのブロッキング、業界団体から懸念続々 「通信の秘密を侵害」「検閲に当たる恐れ」
漫画の海賊版を掲載するサイトについて、政府がISPに対して、ブロッキングの要請を検討している件について11日、通信関連などの業界団体から、相次いで反対声明が出た。「ブロッキングは通信の秘密を侵害する」などと指摘し、既存の法律や新たな立法などによる解決を提言している。 - 漫画の海賊版サイト、問題の深刻さとブロッキングの是非 福井弁護士の考え
漫画の海賊版サイトの被害が2017年から拡大している。「日本政府はISPに対して海賊版サイトへのアクセス遮断(サイトブロッキング)を要請する調整に入った」という報道もあり、さまざまな議論が巻き起こっている。著作権法に詳しい福井健策弁護士の寄稿。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.