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「出版社頼れない」「子供は漫画無料でいい」 海賊版サイト問題と漫画家たちの苦悩(2/3 ページ)

4月24日に、阿佐ヶ谷ロフトAで「海賊版サイト」をめぐる問題について識者らが議論。森田崇先生と鈴木みそ先生が漫画家・クリエイターの立場から海賊版サイト問題について語った。

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「出版社はお粗末だった」


元出版デジタル機構会長で専修大学の植村八潮教授

 政府による海賊版サイトのブロッキング要請の報道を受けて、集英社、講談社、KADOKAWA、出版広報センターがそれぞれ声明を出した。これに対し、元出版デジタル機構会長で専修大学の植村八潮教授は「出版社はいろいろな対策を講じてきたが、それを広報してこなかったまずさがある。出版社の人に会うたびに早く声明を出そうと言ってきたが、ブロッキングの話題が盛り上がった結果、初めて発表するのはお粗末。そもそも出版業界という業界の統一団体はなく、ロビーイングも全くまとまらないという問題も昔からある」と批判する。

 「政府がブロッキング要請を発表したら、初めてそれを支持する声明を出すというのは一体どういうスタンスなのか。本当に読者の視点に立っているのか。ブロッキングは絶対だめだし、『通信の秘密』『表現の自由』を侵害してはいけない。死にそうなのは出版社ではなく、出版の自由だ」(植村教授)


写真家で日本写真著作権協会常務理事の瀬尾太一さん

 ブロッキングについてはほとんどの登壇者が反対の姿勢だ。写真家で日本写真著作権協会常務理事の瀬尾太一さんは「出版社は良くも悪くもピュア。彼らはビジネスではなく文化的行為をしているという意識で、普通の企業と違うロジックで動いている。ピュアだからロジカルな手法も分かっていない」と話すが、大手出版社が歓迎するブロッキングに対しては「あり得ない」と切り捨てる。

瀬尾さん
瀬尾さんが提示した、「著作権侵害サイトに対抗するための5ステップ・ディフェンスルール」

 瀬尾さんは海賊版サイトへの対策として、コンプライアンス教育の促進と、迅速かつ広範な正規版流通の促進を前提とした上で、(1)海賊版サイトへの中止要請、(2)ユーザーへの利用中止要請、(3)広告掲載の中止要請、(4)検索エンジンの制限要請、というステップを踏んで、初めて(5)サイトブロッキング要請、に行き着くとしているが、一足飛びにブロッキングへ飛んでいる現状を「明らかにおかしい」と批判。


楠正憲さん(国際大学GLOCOM客員研究員)

 ネット規制関連の議論にこれまで何度も関わってきた楠正憲さん(国際大学GLOCOM客員研究員)も、「政府は1つ目のステップすら十分にできていない。海外サーバだから手が出ないとか、ブロッキングしか手段がないとか、そもそも事実誤認をしているし、役人の仕事として失格」と辛らつだ。

 集英社は4月19日に、海賊版サイトに対して10年にわたり対策してきたと声明を出したが、楠さんは「何をやったかではなく、どこで手が止まっているかが分からないと、問題の原因が分からない。単に出版社の根気が足りないのか、それとも他に原因があるのか」と疑問を呈した。

集英社
集英社が行ってきた海賊版サイト対策

 しかし、出版社を批判するだけで議論を終わらせてよいのだろうか。

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