検索
ニュース

漫画家・赤松健さんに聞いた、「海賊版サイトをつぶす唯一の方法」(2/3 ページ)

「海賊版サイトをつぶす方法は、ブロッキングでも広告収入を断つことでもない」と話すのは、「ラブひな」「魔法先生ネギま!」などのヒット作で知られる漫画家の赤松健さん。これまで漫画業界発展のためにさまざまな活動をしてきた赤松さんに、海賊版サイト問題について聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

海賊版サイトつぶす唯一の方法は「国産の便利な公式サービス」

―― では、現在連載中の作品についても、さまざまな作品を横断的に購入・閲覧できる公式サービスの提供が有効なのか。ISPによるサイトブロッキングや、広告収入を断つといった対策も提案されているが、それについてはどう考えているか。

 サイトブロッキングも広告収入を断つ方法も、回避策があるのであまり意味がない。海賊版サイトをつぶす唯一の方法は、出版社横断の公式で便利な漫画プラットフォームを提供すること。海賊版にできて公式でできないのは悔しくてたまらない。漫画村でそういったサービスに需要があることは分かったので、その層を獲得できればいい。音楽の定額ストリーミングサービス「Spotify」のような定額制読み放題サービスなどがいいだろう。

コミフロ
アダルトコミック業界では、定額制アダルト漫画読み放題サービス「Komiflo」が国内向けに提供されている(関連記事

―― なぜ、出版社横断の公式サービスは実現しないのか。それについて何か出版社と話し合いはしたか。

 出版社は苦しんでいるように見えるが、やはり自社作品の囲い込みが優先なので、よほど市場をめちゃくちゃに破壊されない限り横断サービスの実現は難しいだろう。海賊版サイト対策に注力する出版社もあるし危機意識もあるだろうが、実際は特に動きはない。

 表現の自由を守るために、国産プラットフォームが望ましい。AppleやGoogleなどはポルノ表現に厳しいが、こちらからすると基準が不明確で何がいけないのか分からない。日本作家と出版社主導のプラットフォームを作れば表現の自由は保たれる。外資への対抗も合わせて考えるべきだ。

―― 公式サービスを実現する方法はあるのか。「出版社と作者が共同で漫画村(のような仕組み)を作り、収益を作者と出版社に正しく分配するシステム」の実証実験を出版社と行うとツイートしていたが、それはどういったものか。

 実証実験については5月にリリースを出す(報道発表する)予定で、まだ内容を固めている状態(プロトタイプを取材時に拝見)。われわれは絶版本を中心に扱っているので、まずは過去作からじわじわ崩していくしかない。Amazonに対抗できるようなサービスにしたいが、5〜10年スパンの作業になるだろう。

 純粋な横断ではないが、例えば横断型リーチサイトならできるかもしれない。「BookLive!」「eBookJapan」などの電子書籍サービスが相互に乗り入れ、1つのアプリでいろんな作品の購入・管理ができるもの。共通の助け舟的なシステム。

赤松さん
「海賊版サイトには技術100%で勝てる」と豪語する

 例えば、「進撃の巨人」が読みたいなら、アプリ内検索すればBookLive!でもeBookJapanでも購入・閲覧ができて読者が好きなサービスを選べるイメージ。今でも毎年電子書籍サービスがつぶれたというニュースを聞くが、恥ずかしいし情けない。

 他はみんなうちはつぶれないと思っているだろうが、困るのは読者なのでそこは大人になってほしいし、APIも公開してほしい。そこにAmazonが参加すればわれわれの勝ち。例えばうちのアプリ1つでそういったことができるようになるといいが。

 海賊版サイトにはモラルと技術で勝てる。いや、技術だけで勝てる。便利なものがあればユーザーはオフィシャルなものを使う。最近はメディアの報道もあり、「漫画村で読みました!」と言ってくる人はさすがに減ってきたのでモラルも上がってきたと思う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る