乳がん見つける“IoTブラジャー” メキシコの19歳青年が開発 日本にも進出か:“日本が知らない”海外のIT(2/2 ページ)
乳がんの早期発見を助けるIoTブラジャー「EVA」。乳がんで苦しむ多くの女性を救うための画期的な製品を開発するのは、メキシコの19歳男子学生という。
そして16年、自分の母親のつらい経験を見てきた彼は、1人でも多くの女性を乳がんから救いたいと考え、Higia Technologiesを創業。友人を巻き込んで、EVAの開発に乗り出したという。
創業から2年、チームは7人となり、アドバイザリーボードには米ハーバード大学医学大学院の准教授や元メキシコ厚生労働大臣など6人を迎えている。さらに今後の海外展開のために、コロンビア、スペイン、米国などにも開発者を抱えている。
実用化が進めば、これほど世界中の女性から求められることはないプロダクトを、たった2年で形にした19歳に世界も驚いている。世界中の学生起業家の中から優秀な人材を表彰する「Global Student Entrepreneur Award」で、ジュリアンさんは17年度のグローバルチャンピオンに選ばれた。また、メキシコの国家技術賞も史上最年少で受賞した。
乳がん増加中の日本で救世主となるか
最近では、乳がんにかかった有名人が闘病生活を公表するなどして、さらにこの病気が注目されるようになってきた。科学や医療の進歩で乳がんの検査や治療などが高度化し、患者数も減ってきているのではと思うかもしれないが、現状はその逆だ。
日本の統計を見てみると、驚くべき状況が見えてくる。約50年前は乳がんにかかる確率は50人に1人だった。それが現在は11人に1人(国立がん情報センター調査、2013年)と、確実に上昇してきている。日本でも女性がかかる全種類のがんの中で乳がんがトップだという。
また、厚生労働省によると、乳がんで亡くなる女性は13年には1万3千人を超え、35年前と比べて3倍以上としている。16年時点での乳がんによる死亡数は1万4千人超となり、増加の一途をたどっている。しかも、30〜64歳の女性だけでみると乳がんが死亡原因のトップとなっているのだ(参考:一般社団法人日本乳癌学会)。
乳がんが増加した背景には、食文化の多様化や食生活水準の高度化で体の成熟スピードが変化し、初潮が早まったことや閉経が遅くなったことが挙げられる。さらに、女性の社会進出による出産回数の減少にも原因があるといわれている。
というのも、乳がんの発生を促すものとして、排卵期に多く分泌される女性ホルモン「エストロゲン」が深く関わっているという。エストロゲンは初潮から閉経まで排卵のたびに分泌され、初潮から閉経までの期間が長い女性や、出産回数が少ない(=出産を経験した女性に比べて排卵が行われる回数が多い)女性は、乳がんリスクが高くなるといわれているのだ。
このように、女性にとってとても身近なリスクになっている乳がん。乳がんの早期発見のためには、定期的なマンモグラフィ検査や超音波検査が必要であるが、多忙な毎日を過ごす現代社会の女性からすると、必要と分かっていても現実的には優先順位が上がりづらいもの。そんなもどかしい状況を、EVAなら解決してくれるかもしれない。
ジュリアンさんいわく、次回の販売と同時に日本への進出も視野に入っており、現在日本の開発者とも連携しているという。日本人女性にとってはかなりの朗報ではないだろうか。若き起業家率いるチームの今後の動向から目が離せない。
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