日立製作所は5月31日、ロボットが学習済みの複数の動作を自律的に組み合わせ、全身の制御を行える技術を開発したと発表した。従来なら数カ月以上かかっていたロボットの動作習得の期間を数日ほどに短縮でき、動作のバリエーションも増やせるという。プログラミングが不要な、学習・成長型ロボットの開発に役立てる。
(1)ロボットが、いま置かれている状況が学習済みか否かを判断し、学習済みの場合は動作を自律的に実行する技術、(2)手順が求められる複雑な作業でも、個々の動作を組み合わせて行う技術――を開発した。
まずロボットには、人間がロボットを操作した際の動作を「教示データ」として学習させ、学習済み動作の画像を想起できるようにしておく。その上で、ロボットが搭載するカメラでいま置かれている状況を撮影し、想起した画像との差が小さければ「学習済み」と判断し、記憶している動作を自律的に実行するという。
個々に学習している動作を、適切な手順で組み合わせる技術も開発。「直列実行」「並列実行」「排他的実行」という3つのケースに分け、実行するかを判断する。
直列実行は、ある動作が完了したら別の動作を実行するというケース。例えば「ドア付近まで移動したら、ドアを通過する」といった流れだ。
並列実行は、ロボットが「ドアを開ける」と「ドアを通過する」をセットで行うように、複数の動作を両方実行するものだ。
排他的実行は、複数の動作候補から学習済みと判断したものを選んで実行するケース。例えば「ドアを開く」場面なら、ドアノブがレバーだった場合の動作を選び、丸いノブだった場合の動作は選ばないようにする。ロボットが撮影した周囲の状況と、想起できる画像を比べて動作を決める。
これら3つを組み合わせ、ロボットがドアの前まで移動し、ドアを開け、通過する――という一連の動作を自律的に行えるようにした。開発した技術は、人間の生活を支援するロボットや組み立て作業を行うロボットなどへの応用を見込み、実用化に向けて信頼性や機能の向上を進めるという。
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